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「弱冠」は何歳のこと? 読売新聞の言葉のコラムが本に

なぜなに日本語 もっと

 本書『なぜなに日本語 もっと』(三省堂)は、読売新聞教育面の連載をまとめた『なぜなに日本語』の続編だ。身近な言葉に潜む謎や落とし穴を発見し、解き明かしていくコラムだ。

 著者の関根健一さんは読売新聞用語委員会幹事、編集委員などを経て、現在は日本新聞協会用語専門委員、文化審議会国語分科会委員をつとめる日本語の専門家だ。

親子で読める内容

 右ページに連載を、左ページにウェブ解説の解説が並べてある。右ページは小中学生を対象に専門用語を使わずに書かれている。左ページは大人向けに文法的に整理しているので、親子がともに読めるように工夫されている。

 6章からなり、第1章は「なるほど ~そういうふうに使うのか!」、第2章は「いかにも ~ふさわしい言い方だな!」、第3章は「なかなか ~うまくできているもんだ!」、第4章は「ふむふむ ~そんなふうに読むのか!」、第5章は「おやおや ~それはちょっと待って!」、第6章は「そもそも ~これが始まりだったとは!」。186の項目が取り上げられており、どこから読んでもいいようになっている。

 小中学生向けのコラムだが、大人が読んでも「へぇー」と感心することが多い。

 たとえば、「なるほど17」の「『生』は読み方チャンピオン」という項目。「生」は読み方がいちばん多い漢字だそうだ。常用漢字表には音が2、訓が10のほか、特別な読み方をする熟語として、芝生、弥生が付表に載っている。名前や地名になるともっと多く、「羽生」という姓は、「はにゅう」とも、「はぶ」とも読む。

 左ページの解説には、常用漢字表の「生」の読みが書かれている。セイ、ショウ、い-きる、い-かす、い-ける、う-まれる、う-む、お-う、は-える、は-やす、き、なま。常用漢字表を離れると「鈴生(な)り」、「生(な)さぬ仲」、「生(うぶ)毛」などがあることを紹介している。

「弱冠」は二十歳以外でも

 「弱冠」は何歳のことか? というコラムも面白かった。古代中国で、二十の年齢を「弱」と言い、元服して冠をかぶるところから生まれた言葉だという。確かに「弱冠は二十歳」のことだと思っていたが、今では十代から三十代くらいまで使用範囲が広がり、辞書でも「年が若いこと」の意味で用いるのを認めている。

 辞書の用例を紹介し、「弱冠十七歳で七段の棋士」(広辞苑)、「弱冠三十五歳で代議士になる」(角川新国語辞典)と幅が広いことを紹介している。

 関根さんは校閲記者を長くつとめた。短い時間で原稿、紙面を点検する新聞作りの最終関門の仕事だ。そうした仕事を経て、読売新聞のコラム「日本語 日めくり」「なぜなに日本語」を執筆、本書のほかに『笑う敬語術 オトナ社会のことばのしくみ』(勁草書房)、『上質な大人のための日本語』(PHPエディターズ・グループ)などの著書がある。日本語への深い造詣に感心するばかりだ。

 ちなみに大手マスコミではこのところ「校閲記者」による出版が目立っている。毎日新聞では『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』(ポプラ社)、『校閲記者の目』(毎日新聞出版)など。朝日新聞では前田安正記者が『マジ文章書けないんだけど~朝日新聞ベテラン校閲記者が教える一生モノの文章術~』(大和書房)など多数の本を出している。

  • 書名 なぜなに日本語 もっと
  • 監修・編集・著者名関根健一 著
  • 出版社名三省堂
  • 出版年月日2019年6月30日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数B6判・393ページ
  • ISBN9784385366074
 

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