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「校閲ガール」の現場が分かる

校閲記者の目

 出版社で校閲担当する女性編集者を主人公にした小説が2016年秋に連続テレビドラマ化され、メディアでの校閲という仕事がにわかにクローズアップされた。ドラマ「校閲ガール」は17年9月にもスペシャル版が放送され、またまた校閲が注目の的に浮上してきたが、それと前後して、本書はその仕事の現場から世に送り出されたもの。新聞社の校閲作業を紹介しながら、われわれが文章を書く上でも役に立つ「プロの技術」を教えてくれる。

バスタ新宿は新宿になかった

 東京・新宿駅に直結する格好で16年4月、高速バスターミナル、バスタ新宿(新宿南口交通ターミナル)が開業したが、このことを伝える新聞記事に誤りがあり、その後に訂正記事が出されたという。「(バスタ新宿が)東京都新宿区とあるのは東京都渋谷区の誤りでした」

 地図を見ると新宿駅は、北側は新宿区だが南側は渋谷区で、バスタ新宿は駅の南側にある。この記事を書いた記者が間違えたことが一番悪いのだが、新聞社ではその責めを負うのは校閲担当部門。ミスのない紙面に仕上げるのがミッションなのだ。「ゴールキーパーは0点に抑えることだけが100点満点。どんな素晴らしいセーブをしてもたった1本のシュートを決められると負け。間違いを一つたりとも見逃せない。校閲とはそんな仕事」と紹介している。

 バスタ新宿のように、施設名や地域の俗称が所在地の地名と違う例は実は少なくない。品川駅があるのは品川区ではないし、目黒駅があるのは目黒区ではない。サブカルチャーの街になったかつての秋葉原電気街は、そのほとんどは「秋葉原」にはない。"校閲の辞書"にそれらは収録されているのだが、バスタ新宿は、オープン当時はまだ候補にとどまっていた。

フェイクニュース選別テクも

 もちろん校閲記者がチェックするのは地名だけではない。人名、商品名、用事・用語、統計、記録から、"最初の読者"として記事に矛盾や不自然な箇所はないかと内容まで踏み込んで確認する。知識や経験、それに粘り強さが要求され、なによりも、好きでなければ続けられなさそうだ。

 インターネット時代のいまでは、メディアが増え、個人でも発信が自在となり、校閲されていない記事がウェブでたくさん公開されている。それがフェイクニュースを拡散させた原因の一つだろう。デジタル化、IT化が進んで新聞社では校閲作業をワープロに組み込んだチェッカーに処理させたりしているが、なかなか人が行うのと同じ効果は得られないという。

 週刊ダイヤモンド(2017年11月11日号)の「目利きのお気に入り」で本書について、紀伊国屋書店和書販売促進部の池松美智子さんは「『あるある』の間違いから、『知らなかった......』の正しい使い方まで日本語の奥深さに驚かされます」と述べている。

 現代の「文章読本」になりそうな一冊。

  • 書名 校閲記者の目
  • サブタイトル あらゆるミスを見逃さないプロの技術
  • 監修・編集・著者名毎日新聞校閲グループ 著
  • 出版社名毎日新聞出版
  • 出版年月日2017年9月 1日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数B6判・221ページ
  • ISBN9784620324630
 

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