お笑い芸人「中川家」の弟・礼二さんが、熱烈な鉄道ファンであることはよく知られている。車掌を真似た車内アナウンスなど本職はだしだ。礼二さんがMCをつとめるNHKの人気鉄道バラエティー「鉄オタ選手権」は、NHK大阪放送局で制作され、関西ローカルで不定期放送されてきた。好評につき、最近は関東の私鉄も取り上げるようになり、BSプレミアムで放送されているので、ご覧になった方も多いだろう。
本書『鉄オタ選手権 関西編』(扶桑社)は、これまでに放送された関西五大私鉄、すなわち南海、京阪、近鉄、阪神、阪急の番組から超難問のクイズを掲載。さらに、ためになる鉄道会社の歴史、沿線紹介、車両紹介などのうんちくをたっぷり詰め込んだ本だ。
番組ではダーリンハニー吉川正洋さんら鉄オタの芸人チーム、当該鉄道会社の社員チーム、沿線の大学鉄道研究会チームの3チームが電車に乗って沿線を訪れ、クイズに挑戦する。そのクイズが超マニアックだ。
たとえば「京阪電車の陣」では、こんな問題。
世界初の技術が京阪にあります。それは4つのうちどれでしょう。 A 空気ばね台車 B 連接車 C 5つ以上の多扉車 D 座席自動転換装置
鉄道の専門家でも即座に答えるのは難しいだろう(答えはD)。ところが意外に芸人チームが優勝することも珍しくない。毎回、最後のクイズはホームの発車メロディーから駅名を当てるというもの。鉄道会社の社員が間違えることもあるからご愛嬌だ。
本書にはいまや「鉄オタ王」の風格すら漂うダーリンハニー吉川正洋さんのインタビューや秘蔵の鉄道アルバムなども収められている。
ところで、この番組はなぜ関西から始まったのか? 鉄オタでもある評者が愚考するに、関西私鉄の方が関東私鉄よりも歴史的に早くから発達してきたことが挙げられるだろう。京都、大阪、神戸などの都市間鉄道として競争してきたので、新しい技術やサービスを積極的に取り入れてきた。だから、クイズのネタにはことかかない。
また、沿線住民の鉄道愛も熱いものがある。いまはずいぶん鉄道会社を母体とするプロ野球球団も少なくなったが、京阪以外の4社は球団を持っていた。もちろん阪神はいまも健在だ。野球の応援とあいまって、独特の沿線風土が形成されてきた。
関東で京王、東武、京成、京急の沿線住民が地元の鉄道に対する愛着を語るだろうか? せいぜい西武沿線の野球ファンがライオンズを応援し、東急田園都市線沿線の住民が地元自慢をする程度だろう。
著者は、「鉄オタ選手権」番組制作班となっているが、おそらくチーム内では、どこの電車がいいとかどうとか、熱い闘いが繰り広げられているに違いない。関東の私鉄もすでに京成、西武、東武、小田急などが登場した。関東編も大阪放送局のチームが制作したのか、そんな細かいところが気になる番組である。
ちなみにネットニュース業界でも鉄道ネタはPVが期待できる鉄板ネタになっており、専門サイトも登場した。J-CASTニュース編集部にも複数の鉄ちゃんがいる。
本欄では『関西圏鉄道事情大研究 ライバル鉄道篇』(草思社)も紹介済みだ。
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