なんともうまいタイトルだ。本書『株式会社化する日本』(詩想社新書)を読み、そう思った。
思想家の内田樹さん(神戸女学院大学名誉教授)、元首相の鳩山友紀夫さん、鹿児島大学法文学部教授の木村朗さんの鼎談をまとめた本だ。
鳩山さんについて、最近あまり報道されなくなっている。そんな興味もあり、手にした本だが、沖縄問題について独自の見解を披露している。
本書で最も意気軒高なのが内田さんだ。安倍政権について、「最も株式会社化した政権」と呼んでいる。これほど長期的に政権を安定的に維持しているのは、政治力ではなく、「キャラクターが株式会社のCEOに期待されているものと一致しているから」と見る。
特徴の一つが「当期利益第一主義」だという。「いまさえよければ、それでいい」という刹那主義だ。多くの企業経営者にとって親和性の高いマインドだ。
もう一つの特徴が、経営の適切性を非常にシンプルな数値で示すことだという。株価が高値であることをもって、「統治は成功している」と言い、議席占有率が高いことをもって「民意を得ている」というロジックだ。そしてこう結論づける。
「安倍さんが長期政権を保持できているのは、株式会社をすべての組織の原型と考え、政治家を株式会社のCEOだと考える『ある特殊な時代』にジャストフィットしたからだ」
国民自身も安倍さんが社長の会社の従業員だと思っている、そんな風潮があるというのだ。
鳩山さんもこれを受けて、「結局は安倍さんがやろうとしていることは、大企業、いわゆる輸出企業にとって、最もやりやすい国家をつくるということで、それは長期的に見れば、必ずしも国民一人ひとりの幸せとは結びつく話じゃないということに、もっと国民が気がつかなければいけないのだと思います」と話す。
木村さんは「民主主義からファシズムへの移行、平和国家から戦争国家への転換を象徴する政権」とし、メディアと司法の劣化の問題を指摘している。
第1章「平成時代と対米自立の蹉跌」の議論で、鳩山さんが「私は恥ずかしながら日本の官僚と米軍人との間の日米合同委員会が毎月二度、秘密裏に行われているということも、その会議の内容もわかっていなかったものですから」と正直に告白しているのに驚いた。
当時の首相も知らないところで、日米のある種の最高意思が決定されていたというのだ。
そして鳩山さんはその壁に阻まれ、対米従属の自立のシナリオを描くことはできなかった。
内田さんは対米従属の構造を可視化したのが、鳩山政権の功績、と持ち上げているが、評者はそう思わなかった。自民党政権では暗黙の秘密事項として引き継がれてきたであろう、「日米合同委員会」。その存在を知らなかった民主党政権の「うぶ」なところに、政権の限界はあったのではないだろうか。日本がアメリカの「属国」である日はいつまで続くのか。
本欄では関連で、『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(創元社)、『国体論』(集英社新書)を紹介済みだ。
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