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男が乗ったのは「人生の転機」へ向かうタクシーだった

運転者

 「運が劇的に変わる時、場というのが、人生にはあります。あなたにも」――。なんとも魅力的なコピーがついている。これまでの人生を振り返ると、「あの時が転機だった」と言える場面が思い浮かぶ人も多いだろう。ただ、それは後々振り返った時に気づくのであって、転機が訪れている最中にはなかなか気づけるものではない。

仕事も私生活も行き詰まる主人公

 喜多川泰さんの本書『運転者 ―未来を変える過去からの使者―』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、何事もうまく行かずイライラしている40代の岡田修一のもとに謎のタクシーが現れ、「人生の転機」となる場所へ連れて行ってくれる。移動中の車内では生き方のレッスンが行われ、修一は運転手から数々の教訓を得てゆく。

 修一は、生命保険の営業職に転職して三年目。大口顧客から契約解除を言い渡され、追い詰められている。妻はパリ旅行を楽しみにしているが、代金を支払えそうもない。中学生の娘は登校拒否。実家の文具店は、商店街の衰退とともに閉じられた。半年前に父が他界し、一人で暮らす年老いた母が気にかかる......。仕事も私生活も行き詰まり、修一の頭は「パンク寸前」の状態だ。

 顔を歪めて泣き出しそうになる思いをグッと抑え、「......なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだよ」と独り言を言う修一の前に、1台のタクシーが現れる。乗ってみると、運転手は修一の名前も行先も知っている上に、「運を転ずるのが仕事です。......岡田さんの人生の転機となる場所に連れて行くだけです」と言う。メーターの数字は乗るほど減っていき、「0」になるまで乗り放題という。このタクシーの正体は?

「人生の転機」に気づくための必須条件

 喜多川さんのFacebookを見ると、「さーっと読めてしまうかもしれませんが、ゆっくり味わいながら読んで欲しい」とある。実際、サクサク読み進んでいったが記憶に残る言葉がいくつもあった。

「運が劇的に変わるとき、そんな場、というのが人生にはあるんですよ。それを捕まえられるアンテナがすべての人にあると思ってください。そのアンテナの感度は、上機嫌のときに最大になるんです」
「僕たちが日々すれ違う人たちの中には、いろんな人がいるんだということです。......すれ違う瞬間までそれぞれにはそれぞれの人生があって今日まで生きてきたんです。僕たちの人生に奇跡を起こす種はそこら中にあるということです」
「自分の人生にとって何がプラスで何がマイナスかなんて、それが起こっているときには誰にもわかりませんよ。......起こったことを自分の人生において必要な経験に変えていくというのが<生きる>ってことです」

 著者の喜多川泰さんは、1970年生まれ。愛媛県出身。東京学芸大学卒。98年に学習塾「聡明舎」を創立。「人間的成長を重視した、まったく新しい塾」として地域で話題となる。2005年から作家活動を開始し、『賢者の書』でデビュー。10年に出版された『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』は13年に映画化された。多くの作品が台湾、韓国、中国、ベトナムで翻訳出版されている。全国各地で講演やセミナーを開催するなど、幅広く活動している。

 本書は、生きる上で大切なことをわかりやすい言葉でストレートに伝えている。心あたたまる物語であると同時に、心の軸がブレたときに立て直してくれる教科書のようだ。

  • 書名 運転者
  • サブタイトル未来を変える過去からの使者
  • 監修・編集・著者名喜多川 泰 著
  • 出版社名株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 出版年月日2019年3月30日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数B6判・240ページ
  • ISBN9784799324509
 

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