読むべき本、見逃していない?

アメリカに「サツマ」という地名が4か所もある理由

  • 書名 大学的鹿児島ガイド
  • サブタイトルこだわりの歩き方
  • 監修・編集・著者名鹿児島大学法文学部 編
  • 出版社名昭和堂
  • 出版年月日2018年11月30日
  • 定価本体2300円+税
  • 判型・ページ数A5判・336ページ
  • ISBN9784812217399

 映画『パリ、テキサス』(ヴェンダース監督)のパリは、フランスの首都のパリではなくテキサス州の町の名前だ。17世紀、英国を米国に向けて発ったメイフラワー号の出発港と到着港がともにプリマスだったように、アメリカには海外と同じ地名が多い。地理に詳しい人なら、ほかにもいくつか浮かぶだろう。バーミンガム、ポーツマス、ケンブリッジ......。

温州ミカンの由来

 ではSatsumaはご存じだろうか。実は4カ所もある。フロリダ、テキサス、アラバマ、ルイジアナの各州だ。もちろん薩摩に由来する。本書『大学的鹿児島ガイド』(昭和堂)には、鹿児島に関する小知識が詰まっている。

 Satsumaをもう少し丁寧に紹介するとこうなる。Satsumaとは温州ミカンの英語名だ。本書によると、「サツマ・マンダリン、サツマ・オレンジとも呼ばれる。最初に海外に紹介されたのは、江戸時代に日本を訪れたシーボルトで、ナガシマ・ミカンとして紹介された......米国へは1876年、ジョージ・ホールによって最初に紹介されたが、米国駐日弁理公使ヴァルケンバーグによって薩摩産の苗木が78年にフロリダにもたらされ、その夫人の命名によって英語名がサツマとなった。これにちなんで、サツマ・オレンジの生産地Fig Tree Islandは1915年にサツマという地名になった......」と説明。他の3都市も「全てサツマの産地であったため、と考えられる」としている。

 温州ミカンは原産地の鹿児島県長島での突然変異種だとする説が有力視されていた。中国浙江省の地名・温州を冠することから中国原産とする説もあった。しかしこれらは誤りなのだそうだ。「近年のDNA解析により、紀州みかんとクネンボ(東南アジア原産で沖縄を経て室町時代後期に入った)との組み合わせで発生したことが解明された」と、俗説への注意を促してもいる。

正確な知識が得られる

 温州ミカン渡米の経緯は、ネット上に人物や年代の怪しい記述が多い。しかし、本書の記述は、さすがに「大学的」と唱っているだけのことはある。1次資料も紹介されていて、安心して知識を増やせる中身になっている。

 サツマの紹介は二十数本収められているコラムの1つだ。コラムはほかに、鹿児島ラーメンと博多ラーメンの違いやタケノコの親木・モウソウチクの渡来(意外に新しく1736年、琉球から導入された2株が始まり)、豚肉食の伝統(豚肉好きで知られた徳川慶喜=別名・豚一=に薩摩藩は頻繁に献上)などがある。

 このほか本書には理学地理的な特徴から、歴史、政治など人文分野までほぼ網羅的に鹿児島が紹介されている。

 『大学的――ガイド』はシリーズで、京都、奈良、徳島、和歌山など現在14巻。これまでにためた知識に正確さを求める向きには格好のシリーズだと言えるだろう。

BOOKウォッチ編集部 森永流)

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