よく似た名前の有名人を取り違えることがある。大変失礼ながら、社会学者の古市憲寿さんと、著述業の古谷経衡も混同してしまうことがある。小説『平成くん、さようなら』(文藝春秋)が芥川賞候補になったというので、評者は何となく古谷さんかと思っていたら、そうではなかった。古市さんの作品だった。
お二人ともメディアによく登場する。古市さんが間もなく34歳。古谷さんは36歳。余り年齢が違わない。社会的発言が多いことも共通する。言い訳で恐縮だが、評者はメディアを通じてお名前を知っているだけなので、つい間違えてしまう。
最近では2018年9月30日投開票の沖縄知事戦についての発言がともに話題になっていた。古市さんは10月4日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)に出演、「沖縄県知事選の戦犯」などと報じられた自民党の今井絵理子・参議院議員について、「少子化問題や沖縄の基地など、やってほしいことがたくさんあるのに、全然議員として存在感を示してない。だから沖縄知事選の戦犯ではないと思うんですね。そもそも今井さんは存在感がないから戦犯にすらならない」と語っていた。
一方の古谷さんは「ネット右翼に足を引っ張られた佐喜眞候補」という論考を発表。敗れた佐喜眞氏の敗因の一つとして、「反翁長(反オール沖縄)の姿勢を鮮明にして、主にネットやCS放送局などを利用して勢力を高めてきた在沖縄のネット右翼」の活動があることを鋭く指摘していた。
この記事は長文にもかかわらず、知事選翌朝の5時半にネットにアップされており、ストーリー展開の巧みさと筆の速さが記憶に残っていた。しかも古谷さんはすでに小説も書いている。そんなこともあって、こんども古谷さんと勝手に思い込んでしまったのだ。
というわけで、古市さんにはちょっと申し訳なかったが、J-CASTではすでに芥川賞に古市さんがノミネートされたことや、候補になってからの古市さんのテレビでのコメントも紹介しているのでお許し願うことにしよう。
本書は、小説のスタイルをとりつつ、平成という時代と、いまを生きることの意味を問い直している。安楽死が合法化された現代日本という設定。平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成(ひらなり)くん」が主人公だ。合理的でクール、性的な接触を好まない彼は、ある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の「愛」に告げる・・・。
物語は、愛が「アマゾンで女性用バイブレーターのカスタマーレビューを読んでいる」場面から始まる。いきなり女性の自慰の話なので、ちょっと戸惑う読者もいるかもしれないが、だからこそ、平成らしいのかもしれない。
ノミネートされたことについて古市さんは、「ほかの候補作が面白いんで、読んでいただいて賞が盛り上がれば」と控えめだが、本書はもともと「文學界」の2018年9月号掲載作品。思い出すのは又吉直樹さんの『火花』だ。こちらも文學界の掲載作品だった。文學界から芥川賞というのは王道コース。古市さんもミリオンセラーの道を突っ走ることになるのか。選考会は19年1月16日だ。
ところで蛇足だが、古市さんは、嵐の相葉クンに顔が似ているような気がするとも思っていた。そこでネットの「そっくり」サイトをチェックしてみたら、ちゃんと登場していた。「そっくり率」は76%だった。
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