読むべき本、見逃していない?

お札の肖像画に込められた深い意味...

天皇はなぜ紙幣に描かれないのか

 今の一万円、五千円、千円の各紙幣のいまの肖像画は、それぞれ、福沢諭吉、樋口一葉、野口英世。本書『天皇はなぜ紙幣に描かれないのか』(小学館)によると、紙幣の肖像画の変遷をたどると「皇族」は登場したことはあるが、天皇が描かれたことはない。それがどうしてなのかを突き詰めていくと、ある理由が浮かび上がった。

 本書は、書名にも用いられたものなど、ユニークな「日本史の謎」30項目をかかげ、その答えを探ったもの。数々ある歴史小ネタ集とは違い、一つひとつが結構濃い読みものになっている。

ユニークな「日本史の謎」30項目

 「結構濃い」とはいっても、たとえば、書名にもなっている「天皇はなぜ紙幣に描かれないのか」のパートは、第2章「時空を越えて、歴史は再生産される」を構成する12編のうちの一つで、量的には9ページほど。本のタイトルにうたっておいて、これかい!?と、だまされた気分になったものだが、解説はギュッとコンパクトになった感じで、読むうちに「なるほど」と思わせ、深みを感じさせる。

 惹句の「編集者からの情報」として「一話完結型の内容になっているため、空いた時間に、気軽に歴史の迷宮を旅することができます」とあるが、それも「なるほど」である。

 さて、紙幣の肖像画の変遷だが、本書によると、日本の紙幣に最初に描かれた歴史上の人物は、明治14年(1881)に、明治通宝紙幣と交換で発行された改造紙幣(十円券)の神功(じんぐう)皇后。「意外にも、日本最初の紙幣の肖像画は、男性ではなく、女性なのである」とトリビア紹介されている。いまの五千円札の樋口一葉は、この神功皇后以来の女性肖像画で発行が始まった当時に話題になった。

 これまで紙幣肖像画に採用された「皇族」は、神功皇后のほか聖徳太子や日本武尊(やまとたけるのみこと)などがあるが、天皇が選ばれたことはない。本書では、神功皇后は最初の紙幣肖像画となったことと合わせ、時代背景や歴史の積み重ねの分析などからその理由の解説を試みている。

「源義経=チンギス・ハン説」以外にもある源氏伝説

 著者の三上喜孝さんは、国立歴史民俗博物館教授。1969年東京生まれで、92年に東京大学文学部国史学科卒業後、同大学院の人文社会系研究科で博士課程単位取得退学したのち山形県でしばらく短大講師、大学准教授などを務めた。この間に、寺に遺された江戸時代の落書きの鑑定などを経験し、そのときに出会った「謎」についても数々をリストしている。

 「天皇はなぜ紙幣に描かれないのか」がある第2章「時空を越えて、歴史は再生産される」ではほかに「『悪人』物部守屋は、なぜ『正義の人』に生まれ変わったのか」や「手塚治虫はなぜ『火の鳥』で騎馬民族を描いたのか」「『源義経=チンギス・ハン』説の誕生と拡大―そのメカニズムとは」などの項目が並ぶ。

 「『源義経=チンギス・ハン』説」は、17世紀から、現代の都市伝説以上に信憑性を持って伝えられたようで、それが、20世紀に入り、満州国建国とシンクロして浸透するようすが述べられている。実は意外にも、源氏にまつわる伝説は義経ばかりでない。義経の叔父で源義朝の弟であり、平安時代末期に保元の乱で敗れ配流先の伊豆大島で自害した源為朝にも、沖縄にわたって琉球王の祖となったという伝説があるそうだ。

 「お城めぐり」や、ご朱印集めの「神社・仏閣めぐり」はまだまだ人気で、深化しながら歴史ブームはまだまだ続く。本書は同好の士との集まりや旅の途中で、格好の話のタネ本にもなる。

  • 書名 天皇はなぜ紙幣に描かれないのか
  • サブタイトル教科書が教えてくれない日本史の謎30
  • 監修・編集・著者名三上 喜孝 著
  • 出版社名小学館
  • 出版年月日2018年9月 5日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判・256ページ
  • ISBN9784093886390

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