「リケジョ」(「理系女子」の略)とは、理工系の分野を学ぶ女子学生のこと。国立研究開発法人科学技術振興機構では平成21年度より、次世代人材育成事業として「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」に取り組んでいる。このプログラムは、科学技術分野の第一線で活躍する女性たちとの交流会、実験教室、出前授業の開催を支援し、女子中高生の興味・関心を高めて理系分野へ進むことを促そうというもの。近年、理系女子は微増傾向にあるという。
喜多喜久さんによる本書『リケジョ探偵の謎解きラボ』(宝島社、2017年)は、リケジョ・久理子に恋する保険調査員の誠彦&研究最優先の久理子がコンビを組み、4つの不審死事件の謎解きをするミステリー小説。「Research01 小さな殺し屋」「Research2 亡霊に殺された女」「Research3 海に棲む孔雀」「Research4 家族の形」の4話で構成されている。
保険金関連のトラブルは、意外に多い。交通事故や死亡事故が起こると、契約に応じて保険金が支払われる。保険調査員・誠彦の仕事は、保険金が支払われる前に、被保険者側に問題がないかどうかを調べ、生命保険会社や損害保険会社へ報告すること。裏付けのしっかりした、バイアスの掛かっていない客観的な報告が必須になる。
一方の久理子は、国立T大学理学部助教授であり、iPS細胞研究の専門家。腎臓を作るための研究に精を出している。誠彦は1年前、行きつけの定食屋で久理子を見かけ、髪がさっぱりと短く、いかにも快活そうな久理子に惹かれた。
誠彦は、調査に行き詰まると、久理子に相談を持ちかけ、科学者である彼女に意見を求める。久理子は、謎解きの思考過程を「トレース」と表現する。事件の背景、関係者の心理状態、犯行プロセスを科学的思考に基づいて順にたどり、頭の中で事件を再現することで、複雑な謎を解くことができる。難解な事件を解決していく過程で、誠彦と久理子は、知人以上恋人未満の関係からさらに進展していくが、果たして、誠彦は研究最優先の久理子と結ばれるのか? 事件の謎解きとともに、2人の関係の変化も、読者を楽しませてくれる。
理系、謎解き、科学...難しい小説かと心配したが、いざ読み始めると、科学的根拠を説明する部分はあるものの、全体的にわかりやすかった。殺人や自殺を扱っているにも関わらず、重たい雰囲気は一切ない。ネットに投稿された読者の感想には続編を望む声が多い。1度読むと、誠彦と久理子にまた会いたくなる。ぜひ、続編や連続ドラマ化を期待したい。
著者の喜多喜久さんは、1979年徳島県生まれ。東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了。第9回『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞を受賞し、『ラブ・ケミストリー』(宝島社)で2011年にデビューした。本書に収録されている4話は、『このミステリーがすごい! 三つの迷宮』(15年)、「『このミステリーがすごい!』大賞作家書き下ろしBOOK」(16、17年)に掲載されたもの。15年には単発ドラマ(TBS/主演 上野樹里)として放送された。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?