読むべき本、見逃していない?

初めて明かされたチキンラーメン誕生秘話

  • 書名 チキンラーメンの女房 実録 安藤仁子
  • 監修・編集・著者名安藤百福発明記念館 編
  • 出版社名中央公論新社
  • 出版年月日2018年9月19日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数四六判・200ページ
  • ISBN9784120051258

 2018年10月から放送されているNHK朝ドラ「まんぷく」の主人公・福子は、チキンラーメンやカップヌードルなどで知られる日清食品の創業者、安藤百福(ももふく)の妻、仁子(まさこ)であることが知られている。本書『チキンラーメンの女房』(中央公論新社)は、その仁子の評伝。百福が、チキンラーメンやカップヌードルを成功に導けたのは、仁子がいてこそだったことがよく分かる。

朝ドラと味わい比べ

 世界に市場を広げているチキンラーメン、カップヌードルは、成長を遂げた日清食品を語るときには欠かせない製品であり、創業者である百福による、これら製品の開発秘話は、これまでにもさまざまに伝えられている。本書の大半も、製品開発をめぐる百福の話で占められているのだが、その折々に、仁子の、えっ!そんなことまで...、とも思うような、慈しみ深いサポートぶりが描かれる。

 百福の製品開発にまつわるヒストリーはだいたいのことが、すでに伝えられているので、紹介されるエピソードの展開や結末は分かっていたり、予想できたりするのだが、ここで彼女はどんなことを?と次々興味をそそられ、ついつい夢中になってしまう。本書は「実録」であり、脚色されたドラマと同じところもあれば、場面によっては、まったく異なる展開のところもある。ドラマを見たあと本書で同じ場面をさがせば、実はこうだったのかなどと、比べて味わうことも。それは、テレビと書籍とのマルチ展開のいまならではのことかもしれない。

遺されていた思い出メモ

 仁子は実は、少女期にさんざん苦労したにもかかわらず、そのことはあまり語らず、結婚のことはほとんど謎とされてきたという。ところが、2010年3月に亡くなったあと寝室で、若き日のことなどがメモされた手帳が見つかり、これを遺族が保管していた。このメモのほか、晩年につけていたという日記や、仁子のことを知る人たちへの取材などをもとに本書は構成されている。

 見つかった手帳は2007年のもので、同年は、それまで62年間連れ添った百福が亡くなった年。なにか心に去来するものがあったようだ。戦前、生活が困窮し、家族らと大阪市内を転々と移り住んだ様子などを思い出してメモされている。「女学校の月謝、どうしても払えず」「狭い長屋、ドブ池の横に住む」などなど...。

幼いころは裕福だったが...

 仁子の父・重信は、福島・二本松神社の宮司を継ぐ家の生まれ。同神社は旧二本松藩で総鎮守だったこともあるなど社格を誇る。重信は次男だったので家を出て事業に乗り出し、大阪で経営した人力車の会社が成功。仁子の母、須磨と大阪で出会い結婚し、仁子ら娘たちも幼いころは恵まれた生活を送っていたという。須磨は旧鳥取藩士の家に生まれ「私は武士の娘です」が口ぐせだった。

 ところが重信の人力車の会社は船や市電などの発達で業績が落ちる一方、重信が手を出したほかの事業がうまくいかず、家族の生活も苦しくなっていった。そのなかでも仁子は、長女とは9歳、次女とは7歳と、歳の離れた末っ子で可愛がられて育ったことなどから、思いやりの深い娘だったという。そして母の須磨からは、苦労が続いた生活のなかで「クジラのように物事をすべて呑み込んでしまいなさい」といわれ、我慢と忍耐を身に付けるよう諭された。この「クジラのように...」の教えをいつも胸に秘めていたから、百福の製品開発を見守り、支援することができたという。

意外な製品化の決め手のヒント

 本書の後半は、百福と結婚した仁子の側からみた、チキンラーメンやカップヌードルの開発物語の流れ。だが、人生がすぐに好転することはない。結婚を機に上向きになるかとも思われた仁子の生活だが、良い局面がなかったわけではないが、まだまだ「クジラ...」のようにいることを求められる。戦中から戦後の激動の時代に、倒産や疎開、財産没収、投獄―と、波乱万丈の百福を支え、その過程は苦労の連続だ。

 これまでは「無一文から」たたきあげ、日清食品創業を成し遂げたとされ百福の立志伝がクローズアップされたものだが、仁子の支えなくして百福の成功はなかったであろうことが本書では描かれる。

 さらには、本書によると、チキンラーメンの製品化の決め手となるアイデアを提供したのは仁子だったという。百福が考えていたのは、麺にスープを染み込ませ、お湯をかけるだけでオーケーという、まさに即席タイプ。だが、小麦にスープを練り込み麺を打とうとするがつながらず、なんどやってもぼそぼそと切れてしまう。麺として整え、長期保存できるようにするにはどうしたらいいのか。

 百福がはっとしたのは、作業を終え台所に来て、仁子が天ぷらを揚げているのを見たときだった。「ひょっとして」と、麺を油に放り込み揚がる様子を観察。これをきっかけに後の「瞬間油熱乾燥法」をうみ、特許登録されインスタントラーメンを世界中に普及させる基礎技術になった。

 朝ドラではぜひ、天ぷらからヒントを得る場面を見たいと思った。

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