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共感必至!「大切な人の死」を綴るエッセイ集

永遠のおでかけ

 本書『永遠のおでかけ』(毎日新聞出版、2018年)は、著者の益田ミリがじっくりと時間をかけて綴ったエッセイ20編を収録。「著者の新たな代表作になる」との声が多く寄せられているという。

 イラストレーターである著者が描いた、白猫と草花のほのぼのとした挿絵。「おでかけ」という言葉の穏やかな響き。ぱっと見ただけでは内容が想像つかないが、「永遠のおでかけ」は「死」を表している。著者は本書で、「大切な人の死で知る悲しみとその悲しみの先にある未来」を描き、「誰もが自分の人生を生きている」とのメッセージを込めている。

 著者が叔父の死を経験して1年も経たないうちに、今度は父の具合が悪くなる。病院の売店で父の好きなビスケットを買う時、これが「最後のプレゼント」になるのだろうかと涙ぐみそうになる。そう遠くないところに父の死の気配を感じながら、父と、その死と向き合った時の素直な気持ちを、さらさらと流れるような文章で綴っている。自分の経験と重ね合わせて共感できる言葉が、きっと見つかる。

 「悲しみには強弱があった。まるでピアノの調べのように、私の中で大きくなったり、小さくなったり。大きくなったときには泣いてしまう。時が過ぎれば、そんな波もなくなるのだろうという予感とともに悲しんでいる」

 「父の死によって、わたしの心の中にも穴があいたようだった。それは、思い出の穴だった。しばらくすると、侵入防止柵を越え、穴の中のはしごを降りることができる。一段一段降りながら、懐かしみ、あるいは、後悔する」

 父がこの世に存在しているうちに、改めて語りたいことがあるかもしれないと思った著者は、「語りという新たなイベント」を父の人生の最後に盛り込む。すると、父はいきいきと語りだす。なるほど、人は亡くなる前、自分のことを誰かに聞いてほしくなるのかもしれない。

 これから永遠のおでかけに行く人、見送る人、両者にとってどんな別れ方が最良なのかはわからない。それでも、著者が亡くなりゆく父と過ごした時間、亡くなった父に思いを馳せる時間は、自分が大切な人の死に直面した時、同じように持ちたい時間だと思った。

 益田ミリは、1969年大阪府生まれ。主な著書は、揺れる30代女性の日常を描いて映画化された人気コミック『すーちゃん』シリーズ(幻冬舎)、『今日の人生』(ミシマ社)、『沢村さん家のこんな毎日』(文藝春秋)、『こはる日記』(KADOKAWA)、『僕の姉ちゃん』(マガジンハウス)、『泣き虫チエ子さん』(集英社)など。絵本『はやくはやくっていわないで』(共著・ミシマ社)で産経児童出版文化賞を受賞。

BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 永遠のおでかけ
  • 監修・編集・著者名益田 ミリ 著
  • 出版社名毎日新聞出版株式会社
  • 出版年月日2018年1月30日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・160ページ
  • ISBN9784620324906
 

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