本書『永遠のおでかけ』(毎日新聞出版、2018年)は、著者の益田ミリがじっくりと時間をかけて綴ったエッセイ20編を収録。「著者の新たな代表作になる」との声が多く寄せられているという。
イラストレーターである著者が描いた、白猫と草花のほのぼのとした挿絵。「おでかけ」という言葉の穏やかな響き。ぱっと見ただけでは内容が想像つかないが、「永遠のおでかけ」は「死」を表している。著者は本書で、「大切な人の死で知る悲しみとその悲しみの先にある未来」を描き、「誰もが自分の人生を生きている」とのメッセージを込めている。
著者が叔父の死を経験して1年も経たないうちに、今度は父の具合が悪くなる。病院の売店で父の好きなビスケットを買う時、これが「最後のプレゼント」になるのだろうかと涙ぐみそうになる。そう遠くないところに父の死の気配を感じながら、父と、その死と向き合った時の素直な気持ちを、さらさらと流れるような文章で綴っている。自分の経験と重ね合わせて共感できる言葉が、きっと見つかる。
「悲しみには強弱があった。まるでピアノの調べのように、私の中で大きくなったり、小さくなったり。大きくなったときには泣いてしまう。時が過ぎれば、そんな波もなくなるのだろうという予感とともに悲しんでいる」
「父の死によって、わたしの心の中にも穴があいたようだった。それは、思い出の穴だった。しばらくすると、侵入防止柵を越え、穴の中のはしごを降りることができる。一段一段降りながら、懐かしみ、あるいは、後悔する」
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