いま総理大臣になったら間違いなく支持率50%を超えるはず。いや60%、70%になるかもしれない。小泉進次郎・自民党筆頭副幹事長は各種の世論調査などから好感度バツグン。日本中の政治家の中で別格の存在だと見られている。まだ37歳と若い。実際に首相になるのは、3年後か5年後か、あるいは...。
そんな注目の人、小泉氏のさまざまな発言をまとめたのが本書『小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉』(扶桑社新書)だ。著者の鈴木款(すずき・まこと)さんはフジテレビ解説委員。
一般にこの種の本は、ヨイショに終始しがちだ。しかし、鈴木さんは適度な距離感を保っており、そこが好ましい。出版社から本書の執筆を頼まれたとき、いったんは辞退しようと思ったという。「番記者のように日常的に小泉氏の言動を追ってきたわけではない」からだ。
とりあえず、改めてフジテレビがストックしている映像素材や同社の番記者たちが残したメモに目を通してみた。そして考えを変える。メディアへの露出が多い小泉氏だが、報じられてきた発言はテレビだと10秒前後、新聞では数行。もう少しきちんと小泉の言葉を伝えたい。なるべくフルな形で紹介したい。そうすることによって、読者に「本当に小泉氏は総理の資格があるのか」判断してもらいたいと思うようになった。
鈴木さんと小泉氏のつき合いは長い。2005年、ニューヨーク支局に駐在していたころからだ。小泉氏はまだ20代半ば。コロンビア大学大学院で国際政治学を学んでいた。何かの折に焼き鳥レストランで一緒に食事をしたことがある。同席していた米日在団のパッカード理事長がとつぜん「お父さんの後をついで、出馬するんだよね」と水を向けた。少しの沈黙の後、小泉氏ははっきり言った。「はい、出馬します」。鈴木さんは、当時はまだ政界入りを明らかにしていなかった小泉氏の決意を、おそらく初めて直に聞いた人になった。
だからと言って、常に小泉氏のそばにいたわけではない。2011年の東日本大震災。鈴木さんは経済記者として福島第一原発を担当した。小泉氏も現地入りしていたが、鈴木さんはその姿を遠目に見る程度だった。
改めて取材対象として意識するようになったのは、小泉氏が自民党の農水部会長になって、農業改革に乗り出してからだという。2016年、小泉氏が雑誌で「農林中金はいらない」と発言しているのを知って驚いた。鈴木さんは「それは違う」と思った。フジテレビの記者になる前に、農林中金で働いていたことがある。だからこそと言うべきか、小泉氏が何を考え、何をやろうとしているのか改めて関心を持った。「抵抗勢力」と対峙しながら構造改革に挑む。それは父の小泉純一郎元首相とも似ていると感じた。
鈴木さんは本書で進次郎氏の折々の発言を紹介する。最近の言葉として「俺は真正面から鉄砲を撃っている」を挙げている。安倍一強体制。首相の政治姿勢を多少なりとも批判すると、「後ろからタマが飛んできた」などと批判されかねない空気があるといわれている。その中で、小泉氏は「真正面から鉄砲を撃つ」構えを崩さない。
自民党の総裁選は今秋に迫る。圧倒的な好感度を持ち、存在感を高めている小泉氏が誰を支持するのか。そのあたりを占う意味でも本書は興味深い。
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