読むべき本、見逃していない?

日本一長い駅名はどこに・・・茨城?、熊本?、島根?

日本全国駅名めぐり

 地図研究家の肩書きで『地名の謎』などの著書がある今尾恵介さんには、『東京の鉄道発達史』『地図と鉄道』など鉄道関連の著書も多い。その今尾さんの新刊が『日本全国駅名めぐり』(日本加除出版)だ。日本には路面電車の停留場も含めて鉄道の駅は1万ほどあるという。今尾さんの駅名にまつわるうんちくが披露され、どこから読んでも楽しめる本だ。

 いっとき長い駅名を競うというブームがあった。鹿島臨海鉄道(茨城県)の「長者ケ浜潮騒はまなす公園前」駅(22字)と南阿蘇鉄道(熊本県)の「南阿蘇水の生まれる里白水高原」駅(同)がトップだったが、島根県の一畑電車が2001年に「古江」駅を「ルイス・C・ティファニー庭園美術館前」駅(24字)に改称し、日本一長い駅名の座を奪われた。ところが栄枯盛衰の理あり。07年に美術館が閉館したため、併設の庭園にちなんで「松江イングリッシュガーデン」駅への改称を余儀なくされたという。長い地名で観光客を呼ぼうという鉄道会社の思惑は打ち砕かれた。

 地名ではなく、施設や学校などを駅名にするのは乗客の利便を図っているようだが、撤退や移転によって駅名が変わる不便もある。東急東横線の都立大学駅は柿ノ木坂駅→府立高等前駅→府立高等駅→都立高校駅→都立大学駅と四度改称しているという。隣の学芸大駅も同様の改称を繰り返した。今や両駅とも当の大学は移転し、実情にそぐわないが、ブランド地名に固執する住民の意向で改称できないのも共通している。

 その点、海岸、高原など自然に由来する駅名は変化がなさそうだが、そうでもないらしい。京成千葉線のみどり台、西登戸両駅は開業当初「浜海岸」「千葉海岸」と称した。海岸の埋め立てで海から遠ざかり、改称したそうだ。伊豆急行(静岡県)伊豆高原駅は、海に近く標高65メートルと低いところにある。また東北新幹線のくりこま高原駅は標高20メートルの平野にある。どちらもイメージ先行で客寄せの狙いがあるようだ。

激増する連称駅名

 東京から大阪に転勤した人がなじめないのは、大阪の地下鉄駅名に二つの町名をつなげた連称駅名が多いことだ。太子橋今市(たいしばしいまいち)、喜連瓜破(きれうりわり)、西中島南方(にしなかじまみなみがた)、関目成育(せきめせいいく)......。二つの町に接していて、一方に絞れなかったということだろう。今尾さんによると、東京の地下鉄にも最近増えているという。大江戸線の落合南長崎、若松河田、清澄白河、南北線の溜池山王、赤羽岩淵、王子神谷などだ。大阪特有の現象かと思っていたら東京にも広がっていた。

 本書には書いてないが、いま首都圏の住宅地として人気が高い「武蔵小杉」駅(JR南武線、横須賀線、東急東横線)だが、戦後しばらく、東急の同駅はなく、「工業都市」という名の駅が近くにあった。同駅が廃止・移転し、東急の武蔵小杉駅が出来た。仮に「工業都市」の名前だったら、タワーマンションが林立する人気の住宅地になっただろうか。もちろん、それら工場跡地にマンションが建ったわけだが。

 地名はそう簡単に変わらないが、駅名は驚くほど融通無碍なことが本書を読んで分かった。駅名を調べると歴史が分かる。先週も『地形を感じる 駅名の秘密 東京周辺』(内田宗治著、実業之日本社)を紹介したばかりだが、駅名がいまブーム?   

  • 書名 日本全国駅名めぐり
  • 監修・編集・著者名今尾恵介 著
  • 出版社名日本加除出版
  • 出版年月日2018年6月13日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判・179ページ
  • ISBN9784817844828

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