「学問に王道なし」とは、古代ギリシャの数学者ユークリッドが、エジプトの王に幾何学を学ぶ近道を問われて述べた答えとされる。学びに安易な方法はなく然るべき過程を経なければならないと諭したものだ。本書『ノルウェー出身のスーパーエリートが世界で学んで選び抜いた王道の勉強法』(TAC出版)は「だれでも勉強が得意になり、よい成績がとれるようになる」テクニックを授けるもの。その内容は決して安易な方法ではないが、現代にふさわしい学びの近道があることを示す。
著者のオラヴ・シーヴェさんは「小学生のときはとりためだつこともなく、テストの結果もごく平凡。中学1年生の成績も平均するとCだった」というから、本書のタイトルにある「スーパーエリート」の片りんもなかったようだ。原書の題名である「Superstudent(スーパーステューデント)」のイメージとも重ならない。ところが中学生のときになぜか成績優秀者クラスに振り分けられ、それをきっかけに「スーパー」な存在に向かうことになった。読み進むに応じて、自分も「スーパー」になれるかも、と感じるようになる。
クラス替えを機に著者の成績は平均Bにアップ。高校に進んでからは学年トップにのぼりつめた。母国で経済系の大学を卒業してから「世界最高レベルの大学」へのチャレンジを決意。MBAプログラム入学のための国際的共通試験といえるGMAT(ジーマット)のため受験勉強に努め上位6%に入るスコアをマークした。英オックスフォード大学のビジネススクール、米名門のペンシルベニア大学ウォートン校、同カリフォルニア大学バークレー校などから合格通知を受けたという。本書は中学・高校、大学、英米の大学院での学習経験で培った勉強の仕方を披露したもの。ただの「経験」ではなく、さまざまな方法について研究を重ね、限られた時間のなかでの計画の立て方、グループ学習の活用、速読の効果の解説、ノートの取り方、記憶術などのほか、試験対策などについても具体的に述べられている。
本書で述べられる勉強を進める上での大事な法則、効果的なテクニックを通じて重視されているのは「反復する」ことと「暗唱する」こと。詰め込みや一夜漬けも「あり」という。受験生ともなれば、科目を問わず機械的に語呂合わせをそらんじるようになるが「ス―パー」を目指すには戦略の一つなのだ。
トランプ米大統領は一時、他国を貶めるような発言を続けた一方で、ノルウェーからの移民は歓迎する意味のことを述べたことがある。もっともノルウェーからは辞退の旨の意思表示が相次いだが、同国の教育水準の高さを裏付けるものだった。本書の帯には「ノルウェー教育・研究大臣の推薦」とあり、いわば国家的な学習指南法か。
ところで、冒頭の「学問に王道なし」だが、王道とは仁徳により治めることを指す。対する言葉として、野心家が武力などで権力を握る「覇道」がある。学問の道に突飛な方法がないという意味では、「学問には覇道なし」が正しい気がする。
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