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米国の弁護士には桁外れのペテン話が持ち込まれる

喜劇としての国際ビジネス

 本書『喜劇としての国際ビジネス』(創元社)は、アメリカの弁護士資格を持ち、世界各国の政府や研究機関とも協同作業をした経験をもつ著者ダニエル・レヴィンが体験したペテン話をまとめたものである。

 外交官の息子として多感な時期を中東やアフリカで過ごした著者は、それらの地域に役に立つという言葉に弱いようだ。見知らぬアフリカ出身者、リチャードから「アフリカの次世代のリーダーを育成するためのプログラム作成に力を貸してほしい」と連絡が入った。著者の知人の知人だという。自分が思い描いていた構想と驚くほど一致していたため、ダラスへ飛ぶと、とんでもないことに。リチャードらに大学購入資金を提供するという話になっていたのだ。すぐに席を立って帰ったが、なぜ、そんな話にだまされたのかという苦い記憶にしばらく打ちのめされたという。

 そんなある日、ワシントンで知人から、シンクタンクにかかわる紳士を紹介される。その博士は外交官である父を知っていた。さらに彼はアラブ首長国連邦の首相から託されたという驚くべき提案を語り始めた。さっそく博士とともにドバイへ飛び、首相との面会を待つが......。なかなか面会が実現せずに焦っている著者に博士は「何を措いても、アラブ人を信じるな。奴らが君に言う言葉は何一つ信じるな。何一つだ。奴らの言葉に信義などない。奴らは全員、嘘つきだ」と言う。しかし、ドバイ在住の博士の知人から博士は病的な嘘つき、サイコパスだと聞き、失意のうちに帰国する。

 そんなペテン話にばかりひっかかっていたら、著者のキャリアは形成されていないだろうし、実際、金融リテラシーを通じた経済発展プログラムをいくつかの国で著者は手掛けているのだが、「霧の低地」と題した章では、国務省のアフリカ担当者から、あからさまな不正の要求をされたことを明かしている。国連、外交官、アフリカ政府高官、中国国営起業幹部など、舞台はワールドワイドだが、相当に「困った人」たちも少なくないようだ。

 本書に書いた出来事と会話はすべて実話だが、人名と年代に多少の変更を加えたという。著者の狙いは「これらの特別な世界に住む人々のあまりにも人間的な下腹部を暴露すること、その記憶をにこにこ、わくわくしながら世にしらせることなのだ」と序に記している。  

  • 書名 喜劇としての国際ビジネス
  • サブタイトル私が出会った〈一流〉という名の怪優たち
  • 監修・編集・著者名ダニエル・レヴィン 著 、松田和也訳
  • 出版社名創元社
  • 出版年月日2017年12月20日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数四六判・311ページ
  • ISBN9784422340012

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