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中尾彬「ねじねじ」大量処分、志乃は推理小説トラック2台分

終活夫婦

 加速する高齢化に応じるように、いわゆる「終活」がマニュアル化され、関連出版物も増えている。ただ何となく、ローソクの火が尽きるのを待つかのようで、釈然としないものがつきまとう。

 夫婦そろって俳優、タレントである中尾彬さん、池波志乃さんの共著『終活夫婦』(講談社)は、老後を楽しむために2人で始めた取り組みについて語ったもの。いわゆる「終活」には違いないのだが、そろってそれを否定。テレビのバラエティー番組でみせる「おしどり夫婦」の掛け合いのように弾む調子で、これまで進めてきた旅立ちの準備を紹介している。

「終活ですね」と指摘されびっくり

 本書のプロモーションのキャッチには「『中尾家の終活』大公開」「自分たちの最期を見据えて...」などの、俗に言う「終活」に合わせた惹句が並ぶ。2人は結婚後40年ほどを経たこの数年の間に、持て余すようになった不動産を処分、遺言をつくり、自宅近くの寺に墓も用意した。中尾さんは今年76歳。「終活」のモデルケースともいえそうだ。

 ところが著者らはともに、それらのことを「終活」とは意識せず、人生の成り行きとして行っていたという。テレビ番組のインタビューで近況を問われて、ありのままを述べたところ「それは『終活』ですね」と指摘されてびっくりする。

「終活」というと、終わりの始まり的なひびきがあるが、二人がやっているのは、新たな旅。まだその旅の途上と考えている。

 「終活」という指摘にはびっくりさせられた夫妻だったがやがて気をとりなおし、これまでの取り組みをリアルに説明する。

 中尾家で「片づけ」が考えられるようになったのは、志乃さんの母親が亡くなるのをはさんで池波さん、中尾さんの順で相次いで大病を患った2006年~07年ごろという。当時50歳だった池波さんは沖縄にあった「セカンドハウス」で、中尾さんは仕事先の大阪で相次いで倒れた。中尾さんは当時、生存率20%の診断を受け周囲は「死亡会見」の検討を始めたという。

 「地獄の底から這い上がってきた」という中尾さん。落ち着きを取り戻してからまず「遺言状」を書こうと思い立つ。持っているものをすべて書き出しリストにし、立会人のもと公証役場でしっかり作った。次に手をつけたのは不動産。都内の住居であるマンション以外の、中尾さんの出身地・千葉県に設けたアトリエと沖縄のセカンドハウス用マンションを売却することにした。

遺言状を公証役場

 近年は各地で空家が問題になり、不動産業者のなかにはそれをビジネスチャンスとみて物件を探しているという。中尾さんのもとにも、千葉とアトリエの跡地でアパート経営の勧誘話などが持ち込まれたが、それらはきっぱり断って更地にして売却。建物撤去代と土地代金で「プラス・マイナスゼロだった」という。ただ、これら不動産処分の前に遺言状を作ってしまったために、今後に書き換えの手間が残ってしまった。遺言状は資産の行方にメドを付けてからの方がベターという教訓。

 だが遺言状作成後とみられるモノの処分はまだまだ続く。業者に引き取りを依頼した食器や洋服は「びっくりするくらい安くて」拍子抜け。こちらは遺言を書き直すまでもなさそうだ。教訓その2は、終活では欲をかくなということらしい。それならばと勢いを得たのか、中尾さんはトレードマークの首に巻く「ねじねじ」を大量処分。志乃さんはかつて書評を書いていたことなどでたまりにたまった推理小説など書籍を手放し、これがトラック2台分あったという。

 本書にはこうしたリアルな「中尾家の終活」のほか、志乃さんの祖父で落語家の古今亭志ん生師匠、父親でやはり落語家の金原亭馬生師匠らが晩年、肉体が衰えるなかでも失わなかった高座への熱意に触れ、夫妻の終活に微妙に影響していることをにじませる。

 2人は住まいに近い東京・谷中にある寺の一つに自分たちの墓を設けたのだが、それは、子どもがおらず、終活マニュアルなどで示されている散骨などを頼む人のあてもないことが理由の一つという。また、この墓にはすでに、志乃さんの母方の祖父母、志乃さんの父母、すなわち馬生師匠夫妻が眠っている。自治体をまたぐ墓の移動は各所の許諾などが必要なことを初めて知ったという。

 ドライになり切れず、書店に並ぶ終活本に手を出すことにためらいを感じている「適齢期」の人たちにとっては、格好の「入門書」にはなりそうだ。

  • 書名 終活夫婦
  • 監修・編集・著者名中尾彬、池波志乃 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2018年4月27日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数B6判・192ページ
  • ISBN9784062210492

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