本書『わたしの容れもの』(幻冬舎)は、2016年5月に幻冬舎より刊行された単行本を、18年4月に文庫化したもの。容れものとは、容器、つまりカラダのこと。角田光代が、ワクワクした気持ちで自身の変わりゆくカラダを綴っている。
毎年欠かさず受ける人間ドック、豆腐を美味しく感じるなどの味覚の変化、初めてのぎっくり腰、階段からの激しい滑落、しぶとく減らない2kgの体重、好きな言葉は「カロリーオフ」と「デトックス」、耐えられない徹夜、まさかの乾燥肌などなど。
著名な作家がどんな日常生活を送り、どんなことを考え、悩んでいるのか。それらを知る術はなかなか見当たらないが、本書は角田光代の飾らないそのままの姿を伝えていて、あたかも自分が角田光代の親しい知人になったかのように感じる。
「この先、こんな変化はいやだと思うときもあるのかもしれない。でも、ただ新しい自分なのだと思えるようでありたい」(「私は変わる」)。この先、今は想像すらできない変化が自分の身に起きた時に、それを劣化ではなく新たな自分として捉える。この発想ができたら、加齢の受け止め方は変わるだろう。
「外見は、中身よりずっとずっと、先んじている。私の中身は未熟で幼稚な部分を多分に残しているのに、外見だけ、大人っぽさを通り過ぎて老いはじめている」(「とりとめのない文庫版あとがき」)。重ねた年齢の数字に、自分の内面が到底追いついていないと感じることがある。「『私』の年齢の重ね方と『私の容れもの』の使用年数のあいだには、ギャップがある」という著者の言葉に、強く共感する。
角田光代は、1967年生まれ。『対岸の彼女』で直木賞、『かなたの子』で泉鏡花文学賞など受賞。多数の文学賞の選考委員も務めている。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?