名画にからむ秘密や謎が注目されるようになったのは、「ダ・ヴィンチ・コード」あたりからだろうか。テレビ番組などでも、その種の番組が増えた。いまでは、名画には謎のメッセージが隠されているというようなことが、ごく自然に、世間で受け入れられているような気もする。
本書『謎が謎を呼ぶ! 名画の深掘り』は、そうした美術作品にまつわる謎を、わかりやすく解説した本である。通常、この種の本は美術史家などの研究者が「余技」として執筆することが多いが、本書の著者は「美術の秘密鑑定会」。正体は明かされていない。たぶん、美術関係に詳しいライターだろう。ふだんからわかりやすく書くことを業としているせいか、文章がこなれている。話の運びも上手だ。
全体は5章に分かれている。「この名画にはドラマが隠されていた」「運命に翻弄された名画のゆくえ」「名画に秘めた真実が常識を覆す」「描かれた名画の暗号を解き明かす」「いまだに謎に包まれた名画を巡る」。
登場する作品は、ドラクロワ「自由の女神」、レンブラント「夜警」、ボッチィチェリ「春」、ミレー「種まく人」、ゴッホ「ひまわり」などあまりにも有名な西洋絵画のほか、日本作品でも、上村松園「序の舞」、歌川広重「東海道五十三次」、葛飾北斎「富獄三十六景」などの傑作が紹介されている。
例えば、マネの「オランピア」では「なぜ、マネが描いた裸婦だけがスキャンダルになった?」。ダリの「記憶の固執」では「柔らかく溶けた時計は何を告げている?」。ブリューゲルの「ネーデルランドの諺」では、「眺めているだけでは読み解けない85の秘密」。ムンクの「叫び」では、「恐怖に耳をふさいだ絵に、画家の壮絶な過去が見えてくる」など、思わずそそられるような見出し付きで解説が並んでいる。
図像解釈学をベースにした深読みもあるが、全体とし画家の人生や作品制作時の隠されたドラマなどに光が当てられ、そのぶん親しみやすい。素人でも、多少の美術通になること請け合いだ。年に何回か大型展覧会に足を運ぶような人なら、読んでおいて損はない。
先行書、類書が多いこともあり、巻末には参考文献が明記されている。この種の文庫本では相当多い。著者が熱心に資料を読み込んだことがうかがえる。
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