東日本大震災の後、被災地で幽霊を見たという人が数多く現れたという。メディアもこれを報じ、「切ない思い、姿を変えて『相思相愛だから現れる』幽霊目撃談、被災地で」(2012年11月19日、朝日新聞夕刊)など、これまでに100件以上の記事が掲載されたそうだ。一方、阪神淡路大震災では、こうした現象の報道がほとんどなかった。本書『「霊魂」を探して』(株式会社KADOKAWA)の著者鵜飼秀徳さんは、報知新聞記者の前歴をもつ僧侶(浄土宗正覚寺副住職=京都市右京区)。東日本大震災の行方不明者は2546人、これに対し阪神淡路大震災では3人。遺体を見つけて供養しなければ「浮かばれない」という日本人の霊魂観が浮かび出たのではないか、宗教家は「霊魂」に正面から向き合うべきではないかと、鵜飼さんは考え、僧侶1335人、20の宗派に対してアンケート調査を始めた。本書からいくつかデータを紹介すると――。
霊的体験をしたことがあるのは40%、霊的な相談を受けたことがあるのは78%、こうした相談に対して、供養、鎮魂、除霊などの宗教的儀式をしたことがあるのは59%、除霊などの効果があったと考えているのは70%にのぼった。「依頼があれば除霊・鎮魂を行う。しかし、僧侶自信、『見えざる力(法力)』について、あまり自覚していない」と鵜飼さんは分析する。
宗派に対するアンケートでは、霊魂の存在を認める傾向が強く、宗教者に法力が備わると考える宗派(修験道、天台宗など密教系)から、教義上、霊魂の存在を認めていない浄土真宗派系の宗派まで、宗派によって立場の違いがあることが分かった。
本書の後半では、青森のイタコ、沖縄のユタ、北海道のアイヌのトゥスクルというシャーマンへの取材を通して、地域で生きつづける「霊魂」信仰の実態を紹介している。
「霊魂」は学問の対象ではないとして学者は研究しないし、僧侶はぼんやりとしかかかわらない。元新聞記者らしいフットワークのある僧侶の著者だからこそ、書けた本であろう。
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