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4年後に「レジェンド」を超えるか

40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方

 スキージャンプ界で「レジェンド」と呼ばれる葛西紀明選手。45歳で挑んだ8度目のオリンピック、韓国・平昌五輪では風に翻弄されるなどして思うように飛べず、リベンジを誓って4年後の次回に「絶対出ます」と宣言した。2022年に開催される北京五輪。葛西選手には49歳でのチャンレンジとなる。

 葛西選手の不屈の「体」と「心」をどうやって養っているのか。その秘密を近著『40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』(東洋経済新報社)で明かしている。

「疲れない体」と「折れない心」で9度目五輪に

 葛西選手は1992年、19歳の時に仏アルベールビル大会で五輪初出場。2度目の94年、ノルウェー・リレハンメル大会の団体で初メダル(銀)を獲得した。その後、長野(98年)、米ソルトレークシティー(2002年)、伊トリノ(06年)、カナダ・バンクーバー(10年)と4大会続けてメダルなしで終わったが、41歳で出場したロシア・ソチ大会(14年)では、ラージヒル個人で銀、団体で銅を獲得。いずれもスキージャンプ競技史上最年長メダリストとなり「レジェンド」と呼ばれるようになった。

 45歳で臨んだ平昌五輪で葛西選手は、大会にエントリーした男子選手のうち最高齢。しかもスキージャンプでは選手としてのピークは20代とされ、20代前半のジャンパーが多い。40歳を超えて世界の一線で活躍していることすら常識破りであるのに、50歳を迎える年(2022年)のオリンピック(北京大会)に出場となれば「レジェンド」以上の存在になるだろう。

 「たしかに私自身、30歳は体力の衰えを感じはじめた時期でもあります。しかし、同年代の選手たちがどんどん引退していく中でも、現役を辞めようと思ったことは一度もありません。なぜなら、『年齢に見合った』効率的なトレーニングに移行することで、限界どころか、世界で十分勝負できるだけの体力と気力を維持できると確信しているからです」

 こう考えた葛西選手は競技生活を通して、だれにでもできるという、30のアイテムからなる「葛西式メソッド」と名づけた心身のトレーニング法を体系化。本書ではそれらを分かりやすく紹介している。

チョコもアルコールもOK

 スキージャンプの選手にとって最も大切なことの一つは「体重コントロール」。1キロ減で2メートル飛距離が伸びるともいわれ、その管理には非常に気を配っており1日に20回も計量することも。やせすぎると失格になることもあるため、20代では減量もほどほどでよかったのだが、40代に入ってからは、それまで以上の工夫が必要になったという。

 やせにくくなるのは代謝の低下であり、減量のためには運動より「食べ方」の工夫が大切という。その一つはまず「腹八分目」を心がけること。「通常の4分の1減らすだけ」で効果は大きいという。空腹感の癒しには、コーヒーをゆっくり飲むことや、野菜スープの活用をすすめる。また「ダイエット」では敬遠されがちなチョコレートに意外な効果があることを紹介するなど、レジェンドへの道も試練ばかりではなさそうだ。もちろん摂取オーバーは厳禁。

 アルコール類も「ご褒美デー」を設けて飲めばストレス解消によいとうれしい導き。ナッツ類など糖質を効率的にエネルギーに変えてくれる「ビタミンB1」をお忘れなくとのアドバイスが添えられている。

 トレーニングでは「寝る前に3分でできる体幹トレーニング」「1日10分のランニングで体は劇的に変わる」「40歳を過ぎたら、筋トレよりストレッチを始めよう」など、手軽に始められる「フィジカルメソッド」を中心に紹介。また「10日1回のサウナ」利用で得られる代謝向上や疲労回復の効果、睡眠の質の高める方法などにもレクチャーは及ぶ。

 著者は「40代だからできる方法」を上手に取り入れれば、40歳を過ぎても20代や30代の以上の成果を出せると述べている。葛西選手の一つ年下で、野球界で「50歳まで現役」を目指している米大リーグのイチロー選手は、45歳を迎える今季は古巣のマリナーズでプレーすることになり現役を続けられることが決まった。サッカーには50歳でなおピッチに立つ三浦知良選手がいる。「人間50年」は今は昔。現代は「アスリート50年」の時代か。

  • 書名 40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方
  • 監修・編集・著者名葛西紀明 著
  • 出版社名東洋経済新報社
  • 出版年月日2017年12月15日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数B6判・228ページ
  • ISBN9784492046210
 

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