しわすは、短大卒業後に就職した会社を四日間で辞めてしまい、現在就活中。しわすにはやりたいことも夢もない。子どもの頃に母親が家を出ていったことがトラウマになり、何事にも反抗的な態度をとってしまう。
しわすは、就活の傍ら、父が宮司をする神社で巫女のバイトを始める。「就職したらやめちゃるけん!」と豪語するが、態度も言葉も悪い、常識も礼儀もやる気もない、うまくいかないのはすべて人のせい。
ある時、神社でボヤ騒ぎが起きたり、賽銭や食べ物が盗まれたりする事件が発生する。しわすは境内に隠れていた5歳の健太という男の子を見つける。親を探し出すまでの間、神社で預かることになり、しわすが健太の世話係に任命される。健太のどうしようもない悪ガキぶりにしわすは手を焼くが、健太の背中に複数のアザを見つけ、健太の置かれた状況を案じる。
ある日、母親が健太を迎えに来て、しわすは世話係から一時解放されるが、数日後、顔に殴られたアザのある健太が再び現れる。ところが、「誰に殴られたの?」と問われた健太は、しわすを指さす。児童虐待の容疑で警察が動き出す事態にまで発展し、周囲から疑惑の目を向けられるようになったしわす。気落ちしながらも、自分と健太は通じるものがあると気づいたしわすは、健太のために何らかの変化を起こそうと思い立ち、ある行動に出る――。
しわすと健太のパートが交互に配置されていて、2人の視点から物語が描かれている。健太は一言も口を利かないし、時々しわすを蹴ったりする。一方、しわすは健太を「ガキ」と言い、イヤイヤ世話係をしている。だが、言葉による意思疎通はないままに、いつしか2人の中に互いへの共感、信頼感が生まれるようになる。巫女と5歳男児という、一見共通点がない2人の物語は、所々に挟まれる福岡の方言により、イキイキと繰り広げられている。
2018年2月3日に公開された映画「巫女っちゃけん。」(監督 グ・スーヨン/原案 グ・ブラザーズ/主演 広瀬アリス)は、福岡県福津市にある宮地嶽神社の特別協力のもと撮影が行われた。主人公・しわすを演じた広瀬アリスの、「イメージを自らブッ壊すようなブッ飛んだ演技」に注目だ。
本書『巫女っちゃけん。』(光文社、2017年)は、映画のノベライズ本である。著者の具光然は、コピーライター、CFプランナー、脚本家。映画「The 焼肉 MOVIE プルコギ」「ゼラチンシルバーLOVE」「ハードロマンチッカー」「巫女っちゃけん。」の脚本を手掛けた。映画のノベライズは本書の他、『焼肉小説 プルコギ』『僕の彼女はサイボーグ』がある。
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