雑誌「ダ・ヴィンチ」連載中から俳優・大泉洋が主人公のモデルとして写真に登場し、話題になっていた。著者の塩田武士も「大泉洋さんに当て書きした」と明言していたのが本書『騙し絵の牙』(株式会社KADOKAWA)だ。2018年本屋大賞にもノミネートされたばかり。
主人公の速水輝也は大手出版社・薫風社のカルチャー誌「トリニティイ」の編集長だが、胃の痛い日々を送っている。雑誌の目玉になる大物作家との付き合いに腐心し、会社幹部からは雑誌の休刊をにおわすプレッシャーを受けている。家庭でも妻と娘から完全に浮き上がっている。
各章の扉写真に登場する大泉洋の表情が苦悩し、奮闘する編集長をよく表している。雑誌存続のために打った起死回生の一手も、会社上層部の派閥抗争と組合問題でとん挫、妻からは離婚を切り出され、速水は公私ともに行き詰まる。そんな中でもかつて文芸誌にいた速水は、作家と作品へのこだわりを忘れない。果たして速水に将来はあるのか。
速水が会社を退職したところで、読者は同情しつつも、こんなもんだろうと思うだろう。しかし題名に「騙し絵」とあるくらいだから、ラストにとんでもないどんでん返しが待っていた。そういえば、表紙の大泉洋の表情を見ると、何か腹に一物もっているような......。
著者の塩田武士は昨年(2017年)グリコ森永事件を題材にした『罪の声』(講談社)も「本屋大賞3位」になるなど旬の作家だ。本書は俳優の写真とキャラクターを前面に打ち出した、ある意味でのメディアミクスだが、作中でも出版社が異業種とコラボするメディアミクスがカギになるとだけ明かしておこう。版元の株式会社KADOKAWAもさまざまなメディアミクスを展開してきたところだから違和感はない。
映画化される場合は当然、大泉洋が主演するだろう。本書のブログで本人が「自分以外の俳優が起用されたら」と心配しているのがおかしい。
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