最近、年少の著者が書いた本が目立つ。中にはうさんくさいケースもあるので取り上げるには注意が必要だ。さて本書『12歳の少年が書いた量子力学の教科書』は、どうだろうか? アマゾンの読者コメントを見ると、星5つが39%、星1つが31%と評価が真っ二つだ。多少量子力学や物理数学をかじった読者からは「微分が間違っているところがある」「教科書レベルに達していない」など厳しい評価が目立ち、素人と思われる層からは「すごい」と称賛の声が寄せられている。そうしたことを頭にいれた上で、虚心坦懐に本書を読んでみよう。
著者の近藤龍一さんは東京都内の中高一貫校の高校1年生だ。タイトルに12歳とあるのは、執筆したのが12歳のときだったからだという。9歳から理論物理の独学を始め、量子力学の入門書と専門書の間に位置する「中間書」(著者の造語)を書こうと思ったのがきっかけだという。
量子力学の発達を追うかたちで叙述は進む。物理数学の公式もほどよい塩梅に配置され、シュレーディンガー方程式など量子力学の基礎的な方程式まで無理なく到達することが出来る(理解するのは別として)。第6章は最近話題の量子コンピューターを取り上げ、その可能性を検討している。
扱うジャンルは違うが、理系数学の解説書として名高い『物理数学の直感的方法』(講談社ブルーバックス、長沼伸一郎著)の影響が見て取れる。著者も「はじめに」で同書のような「中間書」をめざしたと述べている。だとすれば、格調高い文体、地の文と数式のバランスなどはいい影響を受けたのかもしれない。
12歳が書いたから読むのではなく、量子力学について初歩から学びたいという人には、おススメだろう。しかし、あくまで著者が量子力学について理解した「ノート」のようなものである。新たな理論などが打ち出されている訳ではないので誤解なきよう。
12歳でこれだけのものを書いた著者は、このあと何をどう学んでいくのだろう。研究者として大成することを期待したい。(BOOKウォッチ編集部)
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?