考えさせられる本である。何を考えさせられるかと言うと、本のタイトルと内容の関係である。
本書のタイトルは分かりやすい。多くの人々の関心事だ。ところが内容は、やや異なる。はたしてこのタイトルが適切だったのか――ということを考えさせられる本なのだ。
ネットで、本書を読んだ人の感想を拾ってみると、「中身と書名が違いすぎる」「詐欺だ」と言う声が見つかる。
もちろん、「なぜアマゾンは1円で本が売れるのか」ということを、本書で全く書いていないわけではない。52ページから56ページにかけて書いている。実質4ページほど。書名で大々的にうたっている割には分量が少ないが、この部分を読めば、「なぜ1円で」の理由は十分理解できる。その内容をここで詳しく書くとネタバレになるので控えるが、これ以上の分量は不要だろう。「1円」で売れる理由は、それほど単純なのだ。
一方で本書が長々と説明しているのは、副題の「ネット時代のメディア戦争」についてだ。ページ割も、「第一部 デジタルは活字を殺すのか」「第二部 スマホはジャーナリズムを殺すのか」「第三部 ネットはコンテンツを殺すのか」と、変貌するメディアとジャーナリズムの関係に正攻法で迫る。
著者の武田徹さんはジャーナリスト・評論家・恵泉女学園大学人間社会学部教授。様々な出来事に関連してメディアに登場する機会が多い。アカデミズムとジャーナリズムの双方に身を置き、メディアをウォッチしている人だ。副題の「ネット時代のメディア戦争」について語るには適任者といえる。
したがって、2017年1月刊の本書を目次にしたがって「第一部」「第二部」「第三部」と読み進めは、混迷するメディアの現状をきちんと把握することができる。大学のジャーナリズム学科やマスコミ論の学生にとってはテキストにもなるだろう。現役のマスコミ関係者にとっても有益だ。
だから、むしろ、「ネット時代のメディア戦争」と言う副題を書名にすべきだったという見方もあるかもしれない。どちらが正解だったか。
実際のところ、本のタイトルは難しい。「えっ」と思わせるものほど、反響を呼ぶことがある。変化球はどこまでがギリギリの許容範囲なのか。いうまでもなく本欄の記事と見出しの関係も同じだ。もって他山の石と戒めたい。
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