2018年1月から始まるNHK大河ドラマ「西郷どん」。林真理子さんの小説「西郷(せご)どん!」が原作だが、ドラマのスタートを間近に控えた17年11月に全2巻(上製版)と全3巻(並製版)の2種類が刊行された。その主役は、幕末の英雄・西郷隆盛で、これまでにも繰り返し、その生涯が小説や映像作品で物語化されているが、女性視線で描かれる人物像や歴史のとらえ方は新鮮な印象を与える。
物語の幕開けから意表を突く。西郷隆盛の物語なのだから当然、始まりの舞台は薩摩なのだろうと思っていたら、そこは京都。しかも時は明治37年10月12日で、西郷はこの27年前に亡くなっている。
そこの登場するのは、この日、京都市長に就任する西郷の息子、菊次郎。その歓迎の宴で菊次郎やほかの登場人物らに、西郷が実はほとんど酒は飲まなかったなど回想を語らせる。「えらい肥えた」女性が好きだったこと、肖像画は残していなかったこと...。そして、助役に西郷のことをもっと教えてくれと請われ、しみじみとする菊次郎。それを受けて場面が転じ、西郷が幼かったころの薩摩の描写が始まる。
上級の武士が下級の武士を徹底的に見下し階級制度を守ろうとする薩摩藩のなかで、西郷家の家格は下から2番目。下級武士たちはいずれも「こん貧乏から抜け出すには学問しかなか」と身にしみていたという。そんな身分から藩主、島津斉彬にとりたてられ"サツマドリーム"を果たすが、その後は、知られているように、失脚と復帰を繰り返し、のちに「維新の三傑」に列せられるまでになる。
その西郷の生涯を、ある時は母、満佐の目を通して、またある時は篤姫の視線で――など、そのときどきに周辺にいた女性たちをフィルターにして、幕末~維新の物語で強調されがちな"武"の部分を控えめに"人間味"を前面にして描かれる。「せごどん」は郷里の英雄親しみを込めた鹿児島での呼称という。
林さんのこれまでの著作と同じく非常に読みやすく、歴史物を読む際にありがちな、数行あるいは数ページ戻って確認することなく集中して物語を追える。タイトルの「!」も林さんらしい。週刊ダイヤモンド(2017年12月2日号)の「目利きのお気に入り」で本書を取り上げたリブロ営業推進部マネージャー、昼間匠さんは「2018年は明治改元150年。命を懸けて国づくりに挑んだ人たちの思いが今、どう実現しているのかを考えてみるのもよし、歴史物に縁がなかった読者でも林さんのリードで維新時代の入門書として楽しむもよし、です」と述べている。
上製版(前後全2巻、各1700円=税別)のほか、並製版(上中下全3巻、各926円=同)あり。
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