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日本の先を進む「頭脳大国」の秘密

知立国家 イスラエル

 ハイテク先進国としてのイスラエルに注目した本である。筆者の米山伸郎さんは長年三井物産に勤め、現在はコンサルティング会社の代表。

 イスラエルが頭脳国家だということは知られているが、なぜそうなのか。多角的に分析している。

移民がもたらす「パイオニア精神」

 イスラエルは国民1人あたりでみると、ノーベル賞受賞者数、博士号保有者数、教育費、特許数、ベンチャー起業数、研究開発費(対GDP比)などが世界トップクラスだという。

 たとえば、インテル製CPUの8割以上、「グーグル」のいくつかの機能も、イスラエルで開発されたもの。パソコンの「ファイアーウォール」やドローン技術、監視カメラが不審人物を自動的に検出する人工知能フィルター、小型胃カメラなどなども・・・などと聞くと、すさまじさに兜を脱ぐ。まさに「もう一つのシリコンバレー」という感じだ。

 その背景には、ロシアや東欧から高学歴移民を受け入れたことや、イスラエル軍が数理系の才能をもつ若者を選抜する超エリートプログラム「タルピオット」「8200部隊」の存在があること、また、イスラエル社会には「失敗を恐れない精神」、ユダヤ人の伝統である「どんな権威にも遠慮せず、自由な議論を尽くす慣習」、そして世界各国からの移民がもたらす「パイオニア精神」があると、著者は指摘する。

グローバル企業が次々と進出

 厳しい国際的な緊張関係の中でミサイルやサイバー技術の開発に全力を注ぐ。ふと、東アジアの某国を思い出したが、レベルが違うようだ。イスラエルの技術は世界的に注目され、上記のようなグーグル、アップル、マイクロソフト、インテル、フェイスブックといった名だたるグローバル企業が次々と進出して研究開発拠点をつくっている。元々米国との関係が強く太いから、当然かもしれない。

 その様子は本書に先行して出版されている『スタートアップ大国イスラエルの秘密』(加藤清司著、洋泉社、17年1月刊)や、『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』(ダン・セノール、シャウル・シンゲル著、ダイヤモンド社、12年5月刊)にも詳しい。

 生き残るための武器は頭脳しかなかったという歴史。東洋経済の17年11月18日号で本書は、「日本が停滞から脱却する方策をも模索する」と紹介されている。

  • 書名 知立国家 イスラエル
  • 監修・編集・著者名米山伸郎 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2017年10月20日
  • 定価本体800円+税
  • 判型・ページ数新書・239ページ
  • ISBN9784166611430

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