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二匹目のどじょう本もまた、切なかった!

〆切本2

 

 「しめきりがあるから原稿が書ける」と言った作家がいる。言い換えれば、しめきりがなければ作家は書かず、本は出来ない。評者は、書く立場でありながら編集者をしていたことがあった。書く側の心理もわかるので作家先生たちの言い訳を瀬踏みしながら、どこまでしめきりを引っ張るか、下流工程のことを考えながら再三胃の痛い思いをした。作家と編集者は「しめきり」という媒介で対峙し、そして作品は生まれる。

 

 原稿が書けず高野山に立て籠もった谷崎潤一郎、「殺してください」と申し出る井上ひさし、明治の文豪から現代作家まで90人の書き手による94篇のしめきりをめぐる原稿を集めたアンソロジー『〆切本』は、昨年(2016年)出るや、多くの書評に取り上げられ、業界の話題となった。思えば盲点をついた企画だった。多くの作家、編集者がしめきりに悩み、しばしば随筆などでふれながら、それを一冊にまとめるということを思いつかなかったのだ。

 

 そして、二冊目のどじょうと言ったらなんだが、『〆切本2』が出た。今回も森鴎外、二葉亭四迷に始まり、80篇が収められている。週刊現代(11月18日号)書評で評者の吉川浩満氏(文筆家)は「川端康成などは妻の苦労も知らず手紙で口汚く妻を罵る。そこにあるのは美しい助けあいではない。肉親であるがゆえの傷つけあいもある。作家を狂わせる締め切りの魔力はその家族をもいやおうなく巻き込んでいくのである」と書いている。

 

 しめきりをめぐる輪が、もう一つ大きくなったような気がする。

  • 書名 〆切本2
  • 監修・編集・著者名編者 左右社編集部
  • 出版社名左右社
  • 出版年月日2017年10月27日
  • 定価本体2300円+税
  • 判型・ページ数四六変形判・392ページ
  • ISBN9784865281774

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