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佐々木譲の新作はタイトルだけで読みたくなる

書評掲載元:週刊ポスト 9月15日号 著者に訊け!

真夏の雷管

 夏休みのある日の札幌市内で、工具の万引き、硝安(硝酸アンモニウム)の窃盗と2つの小さな事件が発生し、その後、硝安が爆弾の材料になることが分かり、真夏の爆破計画が明らかになってくる...。前作から3年ぶりの「道警シリーズ」最新作。ハードボイルドにふさわしい上手いタイトルが付いている。著者によると当初は3部作の予定だったが、本書で第8弾にまでのびた。

同シリーズは北海道警を舞台にした一連の警察小説で、刑事らの捜査をめぐるハードボイルドなストーリー展開が人気を集めている。一方で、観光名所でもある狸小路のジャズバー「ブラックバード」に集まる捜査員たちのやりとりを楽しみしている読者も多いという。

 シリーズがスタートしたのは、2004年12月刊行の「笑う警官(うたう警官)」。その後「警視庁から来た男」「警官の紋章」「巡査の休日「密売人」「人質」「憂いなき街」と続いた。前作「憂いなき街」で、道警大通署生活安全課の小島百合と刑事課の佐伯宏一が結ばれるなど、作品を重ねるにつれ、ハードボイルド路線がソフト化傾向。著者は「読者がニヤニヤできるモチーフの反復も意識しています」と述べている。

 第1作の「笑う警官」では道警の裏金問題がストーリーのなかで採り入れられるなど、シリーズ各作品では、時にはストレートに、また時には背景ににじませるように、現実のスキャンダルを配してきたが、本書では、JR北海道でこの数年内に頻発した事故や不祥事を爆破サスペンスに結びつけて描いたという。

 これまでのシリーズ作品で定着し、それが好評の、キビキビとした鋭角的なハードボイルドなエンターテインメント性は本書でももちろん変わりはない。そうしたトーンを演出する捜査員のセリフに「女子供は下がれ、ひっこんでろ」というのがあるのだが、女性読者に不評なのだという。「女性蔑視でも何でもなく、弱い者を守らなきゃいけないと思う古臭い男の純情を、わかっていただけないかなあ」と述べている。

  • 書名 真夏の雷管
  • 監修・編集・著者名佐々木 譲 著
  • 出版社名角川春樹事務所
  • 出版年月日2017年7月15日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・352ページ
  • ISBN978475841307
 

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