一般の会話では頻度が高いとはいえない言葉が、渦中の人物から飛び出す機会が何度かあり、それらもきっかけなって「語彙」をめぐる書籍が注目を集めている。本書は語彙増強を強力にアシストしてくれる一冊。著者が「東京大学教養学部首席卒業」というアカデミックキャリアで注目されるが、同時に、わかりやすい教え方が好評の国語講師として知られる。
将棋界で17年4月、最年少プロ棋士(当時、14歳)として注目された藤井聡太四段はプロ公式戦の新記録となるデビュー11連勝を果たし、その感想として「自分の実力からすれば望外の結果なので素直にうれしい」と述べ、記録以上にその言葉づかいが注目された。
藤井四段は、その後6月に連勝記録を20に更新。このときは「自分の実力からすれば僥倖としかいいようがない」と発して、その語彙や教養への関心をますます高めた。
本書は、子どもや若者の言葉づかいは間違っていたり崩れていたりしても、笑ながら注意でもすればすむが、大人はそれではいけないとぴしゃり。中学生ながら社会で注目される立場になれば、藤井四段のように、それにふさわしい語彙を身につけ、いわば、あなどられないよう気くばりをしているのだから、それを見習えというわけだ。
「たとえば、五十代になっても『マジ』ばかり言っている人」を例にあげ「知性や品性を感じることはないでしょう」と厳しく指摘している。「僥倖」とは思いがけない幸運のことで、「望外の~」とは、予想以上に素晴らしい幸運に恵まれたということ。友人との会話ならともかく、だれが聞いているか分からない場で「マジうれしい」などとは口にしてはいけない。
本書ではビジネスの場などで頻度が高い200の言葉について、その意味を解説するばかりではなく「使用シーン」「成り立ち」「強さ、重み」「ニュアンス」などについても紹介。さらに「知性が光る」使い方も解説しており、評者の天狼院書店店主、三浦崇典さんは「基礎教養書として必読」と述べている。
藤井四段の「僥倖」「望外」にさきがけ、注目されたのは言葉に「忖度」があった。補助金不正疑惑の渦中にあった学校法人元理事長が3月に行われた日本外国特派員協会での会見で使ったもの。同協会の通訳がこの言葉の英訳で立ち往生したこともありメディアでとりあげられ瞬間的流行語になった。本書では「忖度」は200語中173番目に紹介されており、そのカテゴリーは「あらたまった場で使われるかたい表現」。日本語に不慣れな外国人記者が多い会見では、TPOを外したワードチョイスだったかもしれない。
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