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親子二代のスパイが実在した

書評掲載元:週刊朝日 2017年8月11日号

スパイの血脈

 「週刊朝日」の2017年8月11号で、作家の黒木亮氏が力の入った長行の紹介文を載せている。「衝撃的なノンフィクション」「まさに巻措くあたわざる一作」。

 CIA(米中央情報局)の幹部職員だったジム・ニコルソンが1996年、FBI(連邦捜査局)にスパイ容疑で捕まる。そこに至るまでの息詰まる攻防。そして懲役23年の刑に服しながらも、獄中から次男を指示してスパイ活動を続け、次男もまた捕まる――という親子二代のスパイ物語である。

 国際的なスパイはプロ同士の仕事だ。たとえば大使館員の中で誰が諜報部員なのか、実のところ互いに知っている。そんな相手をスパイに仕立て上げ、日常的な情報交換からにとどまらないトップシークレットをいかにして入手するか。知恵の絞りどころだ。一般的には、カネ、女、思想などが絡むことが多い。

 本件は「カネ」だった。それも大した金ではなかったという。だが、はした金でも本人にとっては貴重だ。諜報員や、公安関係者の周辺にうごめく「協力者」も、たいがいは「小銭」で情報提供者になる。

 著者は米国のジャーナリスト。約5年かけて関係者に会い、裁判記録を読み込んで本書を仕上げたという。すでにパラマウント・ピクチャーズが映画化権を獲得しているそうだから、そのうちハリウッド作品として公開されるはずだ。

  • 書名 スパイの血脈
  • サブタイトル父子はなぜアメリカを売ったのか?
  • 監修・編集・著者名ブライアン・デンソン 著、国弘喜美代 訳
  • 出版社名早川書房
  • 出版年月日2017年5月 9日
  • 定価本体2000円+税
  • 判型・ページ数416ページ
  • ISBN9784152096869

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