ときどき銀行から電話がかかってくる。資産運用をしませんか、アドバイスしますよ、という。いや、ちょっと余裕がないので・・・こんな経験をお持ちの方は多いことだろう。
銀行とはそんな具合に、個人や企業を相手に、おカネの相談にのるコンサルタントみたいなものだと思っていた。ところが上には上がいるものだ。なんと、銀行さんの相談に乗る人がいるというのだ。
それがこの『対話する銀行』の筆者、江上広行さんだ。電通国際情報サービス金融ソリューション事業部に所属し、主に地域金融機関向けの企画や組織改革、業務改善のコンサルをしている。もともとは地銀の行員で、営業や融資部門、さらには業務改革を進めるプロジェクトチームなどで働いていた。
10年後に銀行はどうなっているのか。特に地方の銀行は――本書を貫くのは、「地銀の未来」についての強い危機感だ。長引くマイナス金利。シャッター商店街。地方経済は疲弊し、融資先も乏しい。一方で、ネットバンキングの拡大。金融庁方面からは「地銀の淘汰」「整理統合」の掛け声も聞こえてくる。「変革」なしでは生き残れない、と言うことは実感しながらも、有効な手立てがない。
筆者は10年前に、コンサル業に転身してから、多数のバンカーに会い、議論を重ねてきた。いずれも現状と将来に悩み、葛藤している真面目な行員たちだ。そして2015年、やる気のあるバンカーたちと、「VCF(バリュー・チェーン・ファイナンス)ネットワーク」を立ち上げた。バリュー(価値)のチェーン(つながる)で、銀行と顧客がともに成長することを目指す。本書はそんな仲間たちとの議論から生まれた。
本書はちょっと変わった構成になっている。実は章ごとにゲストが登場し、問題提起のあと、「問い」を投げかける。それをもとにVCFのメンバー4人の対話が展開するというつくりだ。
第1章のゲストは、坂本忠弘氏(地域共創ネットワーク株式会社代表取締役)、第2章は森川祐亨氏(有限責任監査法人トーマツ パートナー)・・・。第5章で登場する清水広久氏は、埼玉成恵会病院外科部長。いろんな人たちからの金融界への直言や疑問を受け止め、改善策を話し合う。
『捨てられる銀行』『銀行員 大失職』『ドキュメント 金融庁vs.地銀 生き残る銀行はどこか』など、最近、銀行の危機をあおるような厳しいタイトルの本が目につく。本書は金融関係の専門出版社によるものだけあって、そうしたどぎつさはなく地に足がついている。銀行内の勉強会のテキストとしてはもちろん、銀行就職希望者の就活本としても使えそうだ。
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