週刊文春恒例のR-40本屋さん大賞の小説部門の4位に本書は選ばれた。「ハルキファンには懐かしい『たとえ』が全編にあふれている」「好き嫌いに関係なく、はずせない書籍です」と書店員の支持は高かった。ちなみに1位には恩田陸の『蜜蜂と遠雷』が入った。
本書(第1部、第2部)については、すでに多くの書評、評論、解説本が出ている。それらは二つに大別される。一つはいつもと同じ春樹ワールドという見方、もう一つはこれまでとは構造が違うという見方だ。どう解釈するかは置いて、とりあえず、あらすじを見てみよう。
肖像画家の私は、妻に別れを切り出されて、友人の父である高名な日本画家が暮らしていた山中の家に落ち着く。そこで屋根裏から「騎士団長殺し」という絵を発見し、その絵の解読にとりかかる。そのうち谷を隔てたところに住む金持ちの住人から肖像画の制作を依頼される。いったん筆をおった私だったが、引き受けたことから新しい作品世界に到達する。
心地よい住居、くつろぐ音楽、都合のいいガールフレンドとのセックスなど、従来の春樹ワールドのアイテムが今回も登場する。表層的に読むだけでも、快適な読書体験は保証される。
主人公が画家ということもあり、洋画と日本画、具象絵画と抽象絵画についての思索が、作品を通して語られる。ところで題名に出てくる「騎士団長」とは何なのか。ここで種明かしをする訳にはいかないが、具体的でもあり観念的でもあるとだけ書いておこう。
世界ともう一つの世界があり、そこを行き来することによって物語が推進するという構造は、いつも通りといえばいつも通りだが、主人公が到達した地点はこれまでの村上春樹の世界にはない地平と思える。
伏線の回収や主要登場人物の設定などから、第3部の刊行が予想される。
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