もはやタイトルを聞いただけで、すぐに、あの日のことだなとピンとくる。1945年(昭和20年)8月14日の正午から、玉音放送を通じてポツダム宣言の受諾を知らせる8月15日正午までの24時間を描いたノンフィクションだ。
緊迫の御前会議、ご聖断、陸軍の抵抗、放送局での攻防・・・。2度の映画化もあり、概要はよく知られている。
月刊文藝春秋の2017年9月号で、作家の佐藤優氏が改めて本書を取り上げている。
ポイントは二つ。佐藤氏はまず「翻訳」に注目する。連合国側との英文でのやりとりの中にある「subject to」をどう訳すか。軍はズバリ「隷属」と訳した。この場合、「天皇および日本国政府の国家統治の権限は・・・連合国最高司令官に隷属する」となる。これに対し、外務省は「制限の下におかる」と訳した。ニュアンスはかなり異なるが、最終的には「外務省の意訳作戦」が奏効した。「外務官僚が英文翻訳と言う技能を最大限に活用し、終戦の流れを固めたのである」。
もうひとつは、日本放送協会の技術者の見事な対応。クーデターを企てた陸軍の畑中少佐らは放送局占拠を実行し、「我々の気持ちを国民に訴えたい」とくりかえした。しかし、放送会館と放送所への連絡網は技術局員がすでに断っていた。「かりに畑中少佐が放送を強行しても徒労でしかなかったのである」。
「あの戦争の終結が可能になったのはテクノクラートが英知を結集したからである」。佐藤氏はそう結論づけている。
1965年に刊行されてから半世紀余。文庫版はなおアマゾの文春文庫の売り上げで5位をキープしている。息の長い本である。
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