本を知る。本で知る。

我が家の犬のこと、もっと知りたくないですか?

 著者は無類の犬好きジャーナリスト。ラブラドールのミックス犬、ステラを飼っている。帰宅したときに玄関で出迎えてくれるステラは、目の中に入れても痛くない特別な存在。だからこそこの本の表紙を飾ることにもなったのだろう。そのステラへの愛情は犬全体へと昇華し、挙句は犬学にどっぷり首までつかることになった。

犬学とは何かといえば、犬にまつまわるさまざまな分野の総花的な学問。科学的な見地からの研究、殺処分など倫理問題、歴史など幅広い。たとえば遺伝子については、こんな話が出てくる。犬はトイ・プードルやチワワなどの小さな愛玩系から、セントバーナードなどの大型犬までいろいろいるけれども、黒人や白人などの人種間の遺伝子の違いよりも、犬種間の遺伝子の違いのほうが小さい。姿、かたちがあれほど違うのに、意外な事実である。

興味深い倫理問題もこの本には登場する。人気犬をつくるためにブリーダーが、手っ取り早い掛け合わせをする。鼻の低い犬に人気が出てくれば、鼻が低い犬ばかりを掛け合わせをする。パグは、その結果生まれた犬種だ。常にハーハーと鼻息が荒いのは、呼吸が苦しいからで、性急な掛け合わせの代償だ。

ブームの裏側の恐ろしい実態にも触れている。「デザイナードッグ」ブームは聞いたことがあるだろうか。新しいブランド犬を生み出すために次々に掛け合わせが行われた。ビーゴ(ビーグルとゴールデン・レトリーバー)、キャバプー(キャバリア・キングチャールズ・スパニエルとプードル)、フレングル(フレンチ・ブルドッグとビーグル)、マスタドール(イングリッシュ・マスティフとラブラドール・レトリーバー)、パグル(パグとビーグル)……聞いたことのない名前のオンパレード。こうした新しい犬種で人気が出てくれば、劣悪な環境下で、どんどん大量生産がおこなわれる。

ほかに犬の起源や彼らの天才的な能力などについても書かれている。とにかく犬について、あれもこれもと欲張った本。興味は尽きない。1冊手元に置いて、犬の世界にどっぷりつかってみてはいかが?

書名:犬が私たちをパートナーに選んだわけ 最新の犬研究からわかる、人間の「最良の友」の起源
著者:ジョン・ホーマンズ
訳者:仲 達志
発売日:2014/1/31
定価:本体2500円(税別)

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