リーマンショック以降の景気後退は、世界の若者にどのような影響を及ぼしたのか。アメリカでは、大学を出ても就職がままならない。インターン制度も無償が一般化し、期間が終了すれば、そのままサヨナラというただ働きとなってしまっている。働き口がなければ、学資ローンの返済も滞る。焦げ付きが増えれば、審査は厳しくなる。悪循環だ。ローンの返済ができても、長期間に渡れば、家庭を築くこともできない。アメリカン・ドリームは、遠のいたのか?
国家が財政破綻の危機に瀕した、ギリシャやスペインの若者はもっと深刻だ。緊縮財政による増税が経済を直撃している。官公庁は人を削減、公共事業が減り、民間企業の倒産が相次ぎ、失業率はうなぎのぼり。社員募集には、何百人もの応募があるが、採用されるのはごくわずか。仕事にありつくことは至難のわざだ。アイルランドでは、国外に活路を見出す若者たちが増えている。もはや国内に仕事がないのだ。
ただ一方では、先進国よりも高給を稼げる新興国ブラジルの事例もある。母国を飛び出し、新興国へ向かう若者も出てくるのだろうか。
幸いにして日本はいま、アベノミクスの恩恵を受け、景気には明るい兆しが出てきている。それでも上述した事態を対岸の火事と見過ごすわけにはいかないだろう。長らく低迷した日本経済の行く先はまだまだ楽観できない。世界で起きている、あるいは日本で起きている、この過酷な現実から目をそむけてはならない。
書名:僕たちが親より豊かになるのはもう不可能なのか 各国「若者の絶望」の現場を歩く
著者:リヴァ・フロイモビッチ
訳者:山田美明
発売日:2014/1/29
定価:1,785円(税込)