幸せいっぱいで、ハネムーンから戻ってきたはずの二人。
水元憲明・月(ルナ)夫妻は、最悪の気持ちで自宅にたどり着いていた。
「こんなはずじゃなかった(のに)・・・」
何度、二人の頭をかけめぐったか・・・
「十億分の一の相手を見つける」と名を打ったPM社(パービリオン・マッチメイカー社)は、今や日本だけでなく、世界中を巻き込んで、結婚仲介業者のTOPに立っていた。
遺伝子診断と従来のアンケートデータをかけあわせ、登録者から最高の組み合わせをはじき出す計算だ。 25年前に生み出されたこのシステムにより、国民の結婚のほとんどは、この会社の紹介によるものになっている。 多くの人は学生時代から登録をして、最高の相手を長い時間をかけて探し出す。
その中でも、最高ランクのカップルは「特A」。 滅多に出会えないカップルだ。
そして離婚率は、もちろん0%!
水元憲明・月(ルナ)の二人は、この「特A」として引き合わされ、あっという間に結婚をした。
奇跡的な確率で出会うことができた二人は、周囲から羨望のまなざしで見られ、そして誰もが二人の幸せな結婚を確信していたのだ。
何より当事者である二人も、そう「錯覚」していた・・・
しかし今、自宅に戻った二人には、「離婚」の二文字しか思い浮かばない。
趣味も性格も、全て合わない! もう、一刻も早く、離婚がしたい。
少子晩婚化が進み、やっきになって「結婚」と「出産」をすすめるPM社と、恋愛や結婚の本質を探り、「真の幸せ」に向かうことを諦めない、水元憲明・月(ルナ)の真剣勝負。
社のイメージを汚すまいと、様々なトリックをしかけ、妨害しようとするPM社の姑息な手段に、読み手もハラハラドキドキ、目が離せない。
面白いのは、水元憲明側の気持ちと、月(ルナ)側の気持ちが、並行して交互に書かれているところ。 この場面、男性ならばこう感じている!、逆に、女性はこう思っている・・・など、角度を変えて楽しむことができるのだ。
そして、物語を読み進めるうちに、主人公二人の心に微妙な変化が生まれて・・・
PM社の素顔、闘い抜いた二人が出した決断とは?
結婚をしている人も、これからしたい人も、そして、まったく考えていない人も、きっとドキリとする瞬間があるであろう。
恋愛とは、結婚とは、幸せとは・・・科学では決して割り出せない、男女それぞれの心理を追求した恋愛ミステリー小説である。
【局アナnet】
茂木亜希子(絵本ナビゲーター)
書名:さよならのためだけに 作:我孫子武丸
発売:2012年
価格:690円