色とりどりの花たちが、咲きほころぶ季節になりました。
今日も綺麗ね。ああ、良い香り。見て、雲ひとつない青空よ・・・
朝、花壇の植物たちに水をあげる時、そんな言葉をかけることがあります。
もちろん、私の耳には植物たちの返事は届きません。
でも、もしも花や草木に言葉が通じたとしたら、どんな話しが出来るのでしょう。
物語の舞台は、風早の街で戦前から続く老舗の花屋、「千草苑」。
この家の人々は、先祖代々魔法のような「力」を持っていると言われていました。
花屋とともに開いているカフェで働く、美人でラジオパーソナリティも務める、茉莉亜。
現実主義でちょっと勝気な高校生の、りら子。
そして、二人の姉とは違って、魔法は使えないけれども読書好きで夢見がちな、心優しい小学生の弟、桂。
幼いころに母を亡くし、同じ力を持つ父や祖父と暮らす三人は、それぞれが様々な思いを持ちながら、たくましく成長していきます。
植物と話せることで、得られる歓び。
話せることで、感じてしまう現実。
ところどころに垣間見える、亡くなった母への強い想いが、こどもたちの心の中で繰り返し現れます。
友達とぶつかり、弱い自分と向き合うことを覚えたり。
風早の街に住むある人の、長年抱えていた思いを知り、その心に寄り添ったり。
そして、花咲家のおじいちゃんの淡い昔の恋のお話まで・・・様々なエピソードがちりばめられています。
生命は、すべていつかは消えていきます。
だからこそ、何気ない毎日は、かけがえの無い毎日。
植物と触れあい、そして守られながらも、それぞれの「生きる」を真摯に描く、あたたかい花咲家の物語です。
【局アナnet】
茂木亜希子(絵本ナビゲーター)
書名:花咲家の人々 文:村山早紀 発売日:2012年価格:660円