日本の経済は、問題が山積している。債務残高の対GDP比は200%を超え、デフレはすでに20年続き、円高株安の流れも止まらない。新聞や雑誌は暗い予測ばかりし、「日本が沈没する」と不安を煽る。だが、それは本当なのか? 本経済は沈没するのか? もし沈没しそうだというなら、どうすればいいのか? そういう疑問を、田原総一朗氏がもっとも信頼する二人のエコノミストに徹底的にぶつけたのが本書である。二人のエコノミストのうちの一人は、国際金融局長などを歴任し、「ミスター円」の異名を持つ榊原英資氏。もう一人は、経済財政政策担当大臣などを歴任し、小泉内閣の構造改革を主導した竹中平蔵氏である。元大蔵省官僚と、規制緩和を主導した経済学者という、経歴も考え方もまったく異なる二人が、徹底的に日本経済について語り合っている。
たとえば、消費税増税については、2人とも、「消費税は上げる必要はあったが、だが時期がよくない」と意見が一致。ただし榊原氏は、将来的には「少なくとも15%まで引き上げなければダメだ」と述べ、竹中氏は「消費税増税だけでは財政再建はできない」「まずは市場の活性化を最優先すべき」と答えている。原発の問題は、2人の答えは「原発ゼロ」で一致している。そのうえで、竹中氏は「電力を自由化し、市場メカニズムを働かせるべき」、榊原氏は「原発から予算を付け替えて代替エネルギーの開発をすべきだ」と答えている。 日本経済の問題点や現状分析では、両者の意見はほぼ一致している。つまり、二人の意見が一致するということは、議論の余地がない確たる事実だと言っていいのだろう。一方、対応策や政策面については、多くの点で対立した。田原氏は、ここがきっと日本の分岐点となるに違いないと述べている。そして、この「分岐点」こそが、本書の「答え」になっている。日本と日本経済の問題がよくわかり、いま私たちが何をすればいいのか、どうすれば、「日本の未来が明るくなるのか」がはっきりと明示した、1冊になっているのである。
書名:田原総一朗責任編集 それで、どうする!日本経済 これが答えだ!
著者:榊原英資、竹中平蔵
発売日:2012年10月22日
定価:1000円(税込)