イランは米国やイスラエル、サウジアラビアなどと敵対する一方、地域の安定を脅かすIS打倒にも力を入れている。核協議で米国がイランに歩み寄った大きな背景の一つに、IS打倒に向けた「共闘」を模索する狙いがある。イランは中東では希少な安定した大国であり、欧州諸国は制裁解除後のイランを魅力的な市場として注視する。(本文より)
イランと欧米諸国との核開発問題協議が劇的な「合意」に達し、2016年1月に経済制裁が解除された。これによって、総額18兆円とも言われる凍結資金がイランに戻る。シーア派イスラム大国として中東地域の「勝ち組」となり、国際社会のキープレイヤーとして大きく浮上するイランは、「反米」というスタンスを利用しながら諸外国としたたかに渡り合い、シリア情勢の「黒幕」としても暗躍する。特派員として現地に駐在し、政治状況から庶民のメンタリティにまで精通する著者が、世界情勢を読み解くポイントとなるこの国について、詳細にリポートする。
【目次】
はじめに
第1章 シーア派大国への野望
第2章 核開発問題協議――「合意」へのプロセス
第3章 うごめく諸外国の思惑
第4章 「反米」の表と裏
第5章 等身大のイラン社会
第6章 日本はイランとどうつき合うべきか
おわりに
【著者プロフィール】
鵜塚 健(うづか けん)
1969年、東京生まれ。毎日新聞大阪本社地方部副部長。京都大学卒業後、九三年、毎日新聞入社。大津支局、大阪社会部などを経て、2004年4月にはイラク南部サマワで陸上自衛隊の活動等を取材。その後、政治部(外務省担当)、外信部を経て、2009年10月から2013年3月までの3年半、テヘラン特派員を務めた。
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