プロジェクトXのテーマソング、中島みゆきさんが歌う「地上の星」がバックグラウンドに流れてくる。ページをめくるたびにその音量は上がってくる。もちろん頭のなかで。この本は、NHKの番組と相似形をなしている。いくつもの困難に立ち向かい、それを克服し結果を出していくのだ。
ただしNHKの番組のように誰もが知っている企業や発明品が登場してくるわけではなく、地方の小さな一企業によるブランドが出てくるだけだ。しかし、そこにはとてつもない、ドラマが展開している。ブランディングに疑問をさしはさむ先代という反対勢力があったり、サンプル品が設計どおりにならかったりと、家業を継いだ(あるいは継ぎつつある)若い経営者が取り組むブランドたちあげの苦労話にはキリがない。
登場する小さな会社のブランディング成功の陰には、奈良の麻の老舗、中川政七商店の十三代目、中川淳さんの尽力があった。みずからの老舗のブランディングにひととおりの成功を収めた彼は、地方でものづくりを志す小さな会社のために、コンサルタント業を始めた。会計ソフトでアイテム別の売上を出すところから始まる企業もある。まずは会計。そして目指すは、世間に認知されるブランドをつくること。
困難を乗り越えてのサクセスストーリーは、読むものの心を離さない。
【登場するものづくり企業】
○波佐見焼の自社ブランドHASAMIをヒットさせたマルヒロ(長崎)
○普通のパン切り包丁で一番星を目指すタダフサ(新潟)
○世界一ちゃんとしたかばんやさんになる方法を探るバッグワークス(兵庫)
○フローリングへの逆襲を誓う堀田カーペット(大阪)
○新潟発・蓑ポンチョで復活をねらうサイフク(新潟)
書名:老舗を再生させた十三代がどうしても伝えたい 小さな会社の生きる道。
著者:中川 淳
発売日:2012/9/21
定価:1,575円(税込)