原子力行政側は、2012年秋から再処理工場の操業を開始させる予定だと表明している。したがって、この夏から秋にかけて、「六ヶ所」が原発再稼動問題に匹敵するほどの大きな社会的論点になると予想される。
その際、まさに格好のテキストとなるのが本書である。
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原発問題、核問題のキーポイントはどこにあるのだろうか。
個々の原発を俎上にのせて論じることも大切だろう。
しかし、ある「最重要施設」については、なぜかあまり語られていない。
その「最重要施設」は、原子力政策にとってはどの原発よりも重要である。
その「最重要施設」は、国民・住民にとってはどの原発よりも危険である。
それが、青森県六ヶ所村に建つ、使用済み核燃料再処理工場だ。
本書は、3名の識者が「六ヶ所の危険性」を様々な角度から具体的に指摘する。
・「再処理工場」は「原発」よりもはるかに多量の放射能を放出する。
・欧州の再処理工場周辺では、すでに深刻な汚染が実証されている。
・日本はその欧州に劣る原子力技術後進国であり、再処理施設を制御する能力はない。
・施設そのものが、フランスやドイツの技術を継ぎはぎした「無節操」なものである。
・単に「コストがかかる」という理由で、捕捉すべき放射性物質をそのまま放出しよう としている。そのため、稼動するだけで全地球規模に汚染を拡散させることになる。
・施設の下には、明らかに「活断層」が存在している。
・ひとたび大事故が起これば、その影響は九州まで含めた日本全域に及ぶ。福島第一原発事故の比ではない。
なぜ、こんな施設を動かそうとするのか。
そのカラクリは、本書を最後まで読んでいけば分かるはずだ。
再処理工場こそ、原発問題、核問題のキーポイントなのである。
【目次より】
<はじめに> 国を滅ぼす「自爆スイッチ」
<第1章> 「原子力後進国」日本の再処理工場が招く地球汚染の危機・・・小出裕章
再処理工場が取り扱う厖大な放射能/ 「科学」には程遠い再処理工場の「被爆量評価」/ 稼動する前から「経済性」でも破綻/ 汚染は全地球規模に広がる/ 「ガラス固化体」製造工程のお粗末なトラブル/ 日本に自立した「原子力技術」はない
<第2章> シミュレーション「六ヶ所炎上」・・・明石昇二郎 協力・小出裕章
避けた核燃料再処理工場/ 米軍機、MISAWA脱出/ 見捨てられる被災地/ “放射能雲”首都襲来
<第3章> 核燃料サイクル基地は活断層の上に建っている・・・渡辺満久
敦賀、志賀、柏崎刈羽……次々判明する「活断層過小評価」/ 断層長の「値切り」とずさんな審査/ 日本原燃の「報告書」を見て驚いた/ 六ヶ所断層は活断層である/ 大間原発と東通原発の「安全審査」にも疑義
<第4章> 再処理「延命」のため浮上した日本「核武装」論・・・明石昇二郎
「再処理路線」にしがみつく本当の理由/ 「再処理・直接処分並存」は延命のための方便である/ 「安全保障」という新たな大義名分
【著者プロフィール】
●小出裕章(こいで ひろあき)●
1949年生まれ。京都大学原子炉実験所助教。著書に『原発のウソ』(扶桑社新書)、『騙されたあなたにも責任がある』(幻冬舎)など。
●渡辺満久(わたなべ みつひさ)●
1956年生まれ。東洋大学教授。共著に『新編 日本の活断層』(東大出版会)など。
●明石昇二郎(あかし しょうじろう)●
1962年生まれ。ルポライター。著書に『刑事告発 東京電力』(金曜日)、『原発の闇を暴く』(広瀬隆と共著、集英社新書)など。
http://shinsho.shueisha.co.jp/書名:「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場
著者:小出裕章・渡辺満久・明石昇二郎
発売日:2012年8月17日
定価:735円(税込)