本を知る。本で知る。

オウム事件、高橋と菊池は、なぜ17年も逃げ続けたのか?

1995年起きた地下鉄サリン事件で、17年にわたって特別手配されていたオウム真理教元信徒の高橋克也と菊地直子が逮捕された。彼らはどのような逃亡生活を送ってきたか、その供述で事件の真相が明らかになるか、非常に気がかりだ。
 しかし、それ以上に気になるのが、とくに高橋がいまだに現役オウム信者の可能性が高いと裏付ける逸話や証拠が数多く伝えられていることだろう。長い年月を経て、まだマインド・コントロールは解けていないのか。

 そもそも「マインド・コントロール」とはどういうものか。オセロの中島知子さんの事件のように、占い師や霊能者、詐欺師によるカルトまがいの詐欺事件が、しばしばテレビや雑誌を賑わせている。そんなに簡単に、人を騙すことができるものなのだろうか。

 占い師や霊能者による事件は、ワイドショーの中のことで、自分には縁のない遠い世界と思っている人が多いが、実は、マインド・コントロールの脅威は私たちのすぐそばに迫っている。たとえば、社会問題にもなった「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」、「霊感商法」の手口には、カルト集団が確立したマインド・コントロールの手法が使われているのだ。

 本書は、この「マインド・コントロール」について、日本で初めて徹底解剖した本である。著者は、X JAPANのTosh1さんが入っていたホームオブハート事件のほか、数々のカルト集団による事件を被害者側の弁護士として手がけてきた、この分野の第一人者である。
 実際に起こった事件において、カルト集団がどのような手口を使い、どのように人びとを罠にかけていくのか、著者はすべてを見ている。また、マインド・コントロールの手法を用いた悪徳商法の被害者を救済する活動もおこない、その手口もすべて熟知している。さらに、マインド・コントロールされた人びとの話に熱心に耳をかたむけ、マインド・コントロールが解けていくプロセスにも何度も立ち会ってきた。

  本書は、マインド・コントロールに関する私たちの素朴な疑問に丁寧に答えてくれている。
「恋愛中の男女もマインド・コントロールにかかっていると言えるのか」「コーチに心酔するスポーツ選手はマインド・コントロールされているのではないか」というものから、「マインド・コントロールで駆使される心理テクニックとは?」「家屋敷まで巻きあげる手口とは?」という基本的な知識まで、たくさんの具体例をひきながら、わかりやすく解説してくれる。
 家族や友人が被害にあわないためにも、ぜひとも読んでいただきたい一冊である。

書名:マインド・コントロール
著者:紀藤正樹
発売日:2012年5月28日
定価:1000円(税込)

思想の一覧

一覧をみる

書籍アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

漫画アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?