今、東南アジアで成長国として注目を集めているフィリピン。
しかし、投資対象としてその実態はどうなっているのか?
2013年からフィリピンに渡り、独学で投資ノウハウを築いてきたファイナンシャルプランナーの町田健登氏は『副業時代に手堅く儲ける フィリピン投資入門』(幻冬舎刊)を上梓。
32歳で総資産1億円を築き、「フィリピン投資」の現実を明かしている。
フィリピン投資で抑えるべきポイント、投資のおける税務の知識や口座開設など、実務面もカバーした本書について、町田氏にお話をうかがった。
(新刊JP編集部)
――『副業時代に手堅く儲ける フィリピン投資入門』について伺っていきます。まず、なぜフィリピンに注目されたのかというお話からお願いできればと思います。
町田:赤裸々にお話をすると、人生に息詰まって、たまたまフィリピンに行ったんです(笑)。というと驚かれるかもしれませんが、本当です。
今から7、8年くらい前、私が社会人2年目のときに授かり婚をしまして。妻とは同じ外資系企業に勤めていて、同期だったのですが、貯金も何もない状態で子どもができたんですね。でも、仕事に忙殺されていても、増えるのは残業ばかりで、出世できない。お金も貯められない。さらに保育園に子どもを入れられる望みも薄いというところで、このまま東京にいながら家族で住み続けられるイメージがありませんでした。
だから、せめて得意な英語を活かしてもっと田舎に転職するとか、そういうことを考えたんです。ただ、転職サイトのリクルーターに相談をしてみたら、「辞めてはいけない、今いる以上に稼げる場所はない」と言われて、「いや、どう働くかを決めるのは自分だ」と言い放って(笑)。その中で海外駐在の道をおすすめされたんですよ。駐在員なら手当も出るし、給料もそこまで落ちないと。
――なるほど。それに英語も活かせますし。
町田:そうなんです。子どもにも十分な教育を受けさせられることができるのではないかと言われて。ただ、一つ条件がありました。それは、僕のステータスでは先進国の駐在員は難しいということです。私は、アメリカ留学していたとはいえ、ただの語学学校。アメリカの大学で学んだ経験はないですし、当時勤めていた外資系企業も国内営業担当で、海外でのビジネス経験はなかったからです。
そこで転職会社から、紹介されたのが、フィリピンでした。実は私自身、学生の頃にたまたま、フィリピンにボランティアとしてニワトリ小屋を作りに行ったことがありまして、このときにフィリピンという国に惚れたんですよね。いつか戻りたいとは思ってましたが、ここで初めてフィリピンで働くという選択肢が生まれました。
――フィリピンはもともと馴染みの国だったわけですね。
町田:はい。当時のフィリピンには高層ビルもほとんどないし、治安もかなり悪かったけれど、すごく人が明るくて面白い国だという印象があったんです。あとはとにかく物価が安い!東京で生活していた当時は、子供の教育資金をためようと、缶ビールを発泡酒に変えるとか、節約することに尽力してましたが、フィリピンのビールは、当時、1本50円!発泡酒に変えなくてもビールそのものも安いんです。物価が安いから、同じ時間働いても、手の故地が違う。フィリピンに住むことができれば、今のお金に苦しむ生活から抜け出せるかもしれない、これが自分の生活を豊かにするための答えなんだと思いました。
また、海外駐在っていわゆる出世コースになるので、給料の上がりも早いし、サラリーマンでもハウスキーパー付き、ドライバー付き待遇なんです。さらに、家はプール付き。ジムもある。これなら独立起業のようなリスクをとらなても、サラリーマンのままリッチな社長のような待遇の生活ができる!!と考えたわけです。それで駐在員の選考を受け、フィリピンに駐在できる会社に転職をしました。
――その時は投資にはまだ出会ってなかったんですか?
町田:そうですね。投資の「と」の字もなかったです。投資に触れたのは、その後ですね。
――それはどういうきっかけで?
町田:今までお話を聞いてくださって、「世の中、そんなに甘くない!!」と思いませんでした? まさにそれです。いざフィリピンに駐在したら、職場も住環境も劣悪で。駐在先も首都のマニラではなくカランバ市という街だったんです。
ただ、それはもともと聞いていたことで、下見もしていたので、それを承知で行ったのですが、日系企業が多い街とはいえ、治安が悪すぎて日本人はみんな他の街に住んでいました。そのエリアで住んでいた日本人はおそらく僕らくらいだったでしょうね。高級レジデンスの夢はあっけなく破れ、すきま風と蟻が入ってくるような家に住むことを余儀なくされ、自動車も社用車が1台、しかも他の人とシェアするという環境で移動もままならない状況でした。雨が降れば、インターネットも止まります。日本では、信じられないですよね?
そこで3年くらい生活していたのですが、住環境のストレスはまだまし。
一番厳しかったのが、会社のブラック企業ぶりでした。そもそも、私、国際総合学類出身の文系卒なのですが、任された仕事が建築現場の現場監督や、病院の新規事業立ち上げ等。おかげでいろいろ鍛えられましたが、前提知識がないままフィリピン人の部下を抱えて、取り組みましたが、当然、なかなか結果が出ません。
当時の日本人上司たちは、「叱る=愛」と認識していたのか、毎日出社をしては会議室に呼ばれて、朝数時間のお説教。仕事の良し悪しにとどまらず、私の人格を毎日否定され続けました。徹夜で仕上げたレポートを目の前で破かれたり。できないのは自分の能力が足りないからと最初は努力を重ねましたが、何度も「お前は役立たずだ」「何もできない」「脳みそついてるのか」と毎日怒られ続け、常におびえたように人の目を伺い生活するようになりました。
――会社を辞めようとは思わなかったんですか?
町田:入社して半年で辞めようと思いました。でも、収入の柱が「お給料」の一つしかなかったので、辞めるに辞められませんでした。お給料も、家も、海外では働く就労ビザも、すで、その駐在先の会社に依存していたため、辞めたらすべてを失ってしまう。フィリピン駐在への転職という選択肢もありましたが、駐在員は狭き門。一度、研修のため日本に戻るという会社がほとんどでしたし、その先で本当にフィリピンに戻れるかわかりません。どんなに会社でバカにされようと、しがみつくしかなかったんです。
そんな時、人生を変えてくれたのが、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん 貧乏父さん』です。
私が駐在員として赴任してきた時の現地の先輩に一人だけ見方がいらっしゃって、私の状況を見かねて、その本を渡してくれました。
その本に出会ったのは駐在して半年目くらいのことで、その時に初めて投資について知ったのですが、その時はまだフィリピンで投資をしようとは思っていませんでした。情報もないし、やるなら日本の不動産や株だろうと。それで他の投資本もいろいろ読んで、著者さんにラブレターを送ったりするんですが、だいたいは「私の相手をしても海外居住だから、金にならない」と判断されて無視されます。不動産を買うと言っても売ってもらえない。
でも、その中にもアドバイスをくれる著者さんもいて、その中の一人に「足を使わないと本当のことは分からない。日本に戻るのが難しいなら、フィリピンをちゃんと見てみては?」というアドバイスをもらって、そこからフィリピンの不動産と株を本気で勉強しだしたという経緯です。
――確かにフィリピンの投資情報は、まず日本では聞かないです。投資対象としてのフィリピンの魅力はどこにあると思いますか?
町田:正直なところ、商品によりますね。ただ、マーケット全体で考えると、今後人口が倍の2億人になると言われています。水や食料品といった日常用品を考えても、人口が2倍ということは、消費が2倍、つまり経済規模も2倍になる。こんな分かりやすいマーケットはないなと。
――人口が減少していく先進国では考えられませんね。
町田:しかも、例えばミネラルウォーターなら、それを製造している会社って調べても数社程度しかないので、ほぼ独占状態というか。特に財閥は強いので、この財閥株を買っておけば国の成長に伴って株価も勝手に上がっていくというだろうというところが初期の頃でした。
私は不動産投資から始めたんですけど、今から5年前くらいはまだ中国マネーが入ってくる前で、2016年にドゥテルテ政権になってから不動産が急上昇していきました。それは新築に限らず、ですね。日本ではありえない話ですが。
――ただ、あまり成熟していない市場と考えるなら投資詐欺とかも多そうです。
町田:そうですね。私もフィリピンの不動産デベロッパーに話を聞きに行ったのですが、利回りとかの数字面ではなく、「屋上にプールがある」「財閥が建てた」みたいな抽象的な話ししか聞けませんでした。私が知りたいのは、「その不動産は儲かるのか?」なのに、的外れな回答ばかり。利回りがいくらか、その利回りの根拠は、どのくらい値上がりするのか、その根拠は?この話を踏まえず、ただイメージで不動産を売りたがる不勉強な方が多いなと。
それからもうだいぶ経った今でも、いまだに不動産詐欺はありますが、当時はさらにひどかったです。これはちゃんと勉強をしないとダメだなとまずいなと思い、少ない休日に足を使ってひたすら、不動産を見て回り、相場を頭に入れました。
――フィリピンで不動産は外国籍の人間でも買えるのですか?
町田:買えるのはホテルコンドミニアムだけです。土地とか、アポート一棟とかそういう買い方はできません。また、今はもう不動産価格が上がってしまっていてあまりうまみがなく、悪い業者が入り込んでいるので、ローンを組んで不動産を買っても、金利が高すぎて足が出てしまうんです。
不動産を売る業者は売った時のコミッションが欲しいので、たくさん売ったほうが儲かる。だからたくさん売ろうとするけれど、基本的には自分のことしか考えていないです。契約書も「英語だから読めないだろう」と勝手に手数料を上乗せしてきたり。
――本書を読むと初心者でも入りやすい印象を持ちましたが、お話をうかがうと、また別の面で気を付けるべきことがたくさんあるのだなと。
町田:そうですね。本では確かに詐欺への注意喚起の部分が少なかったので、このインタビューの中でそこは強く訴えたいです。投資詐欺が多いので、変な儲け話に乗らず本当に真っ当なものに投資をしてほしいです。
――となると、フィリピン現地の情報なども必要ですし、勉強も必ずしないといけませんね。
町田:はい。「何でもいいから儲かる」というのは絶対間違いですからね。フィリピンで投資をするときの最大のコツは、法律上100%大丈夫なものに投資をすること、そして100%逃げないという人と組むということです。めちゃくちゃ当たり前の話なんですけど(笑)、「金儲け」と聞くとみんな目が血走ってしまう。
(後編に続く)
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