子どもの頃の家庭環境や、幼少時に見聞きしたもの、大人になる過程で経験したことなど、私たちは外部の様々な物事に影響されている。
「あの時の経験があったから、今の自分がある」と言えるようないい経験は誰しも一つや二つはあるはずだが、人生をゆがめ、窮屈にしてしまっている原因となっている「悪い経験」についてはなかなか気がつかないものかもしれない。
私たちは自分の人生がゆがんでいることに気づかない。ただ、漠然とした生きづらさや苦しさを感じるのみである。
■「怖れ」が幸福を遠ざける
『「幸せのタイムライン」に乗る生き方の法則』(櫻庭雅文著、徳間書店刊)は、人を幸せから遠ざける原因を「怖れ」だとしている。
この怖れこそが、過去の経験によって形作られる。たとえば両親の折り合いが悪い家庭で育った人は、結婚に多少なりとも臆病になる部分はあるだろうし、親に愛されている実感を持てずに育った人は、そのことを強烈なコンプレックスとして抱え続けることがある。これらはいずれも、その人を幸福から遠ざけてしまうだろう。
■性的に奔放な母親を見て育った男性が抱く「怖れ」
本書では、過去の経験から刷り込まれた怖れが作用して起きてしまうことの一例として「セックスレス」を挙げている。
たとえば、母親の性的な一面をしばしば目にしながら育った男性のケースがそう。
著者の櫻庭雅文氏は「性的に奔放な母親を見て育った男性は、自分の妻にはそうあってほしくないという"怖れ"から、妻の性的な部分から目をそらすようになってしまいます」としている。
交際していた時期はむしろ積極的に性的接触を求めていた男性が、結婚が決まった途端にその意欲を失ってしまうようなケースは、この種の恐れが原因にあることが多いようだ。怖れの対象が「妻が性的に奔放になることへの怖れ」である以上、外の女性には性欲を持つことができるのも特徴である。
また、櫻庭氏は女性に多いセックスレスの原因として、「躾のなかで性に対する罪悪感や嫌悪感を刷り込まれること」を挙げる。日本の性教育は遅れていると言われるように、セックスについての正しい知識を教えるどころか、家庭内で性についての会話がタブーになっていることはまだまだ多い。性がタブー視される環境で育った人にとっては、性自体が一つの怖れとなってしまうのだ。
◇
ここではセックスレスをテーマに「怖れ」の影響を取り上げたが、誰でも何かしらはこの種の怖れを持っている。
もし、普段の生活に漠然とした不安や、苦しさを感じているなら、その原因となっている怖れを特定し取り除くことで楽になる部分はあるだろう。本書はそのために大いに役立ってくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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