突然だが、「スピリチュアル」と聞いてどんなイメージを持つだろうか。
「死後の世界」「精神世界」「人知を超えたもの」というイメージ、あるいは「あやしげ」「宗教っぽい」と思っている人もいるかもしれない。
そのイメージの正否はともかく、今、出版界では「スピリチュアル」を扱う本にベストセラーが続出している。
22万部を記録した『成功している人は、なぜ神社に行くのか?』や、9万部を記録した『「龍使い」になれる本』(ともにサンマーク出版)など、スピリチュアル本には出版不況と呼ばれる中でも堅調に版を重ねる本が多く、頼もしいジャンルになっている。
この「スピリチュアル本」のナンバーワンを決める「スピフェス」が17日、東京・浜松町で行われ、編集者や出版プロデューサー、著者、そして読者など、多数のスピリチュアル・フリークが集った。
■「神様」「宇宙」「龍使い」…スピリチュアルブームで生まれた人気書籍
このイベントでは、普段からスピリチュアル本手掛けている編集者や出版プロデューサーら7人が登壇。それぞれ、自分が制作に携わったものと、そうでないものの1冊ずつおもしろかったスピリチュアル本を挙げ、その魅力をプレゼンテーションした。
そこで挙げられた候補作と、それぞれへのコメントは以下の通り。
・『あなたの人生に奇跡をもたらす 和の成功法則』(大野靖志著、サンマーク出版刊)
「この本は古神道がベースになっていて、日本発です。日本に伝わる“祓い”と“言霊”が、5次元に通じる、という画期的な理論にも注目です」(サンマーク出版・金子尚美さん)
・『願いはすべて、子宮が叶える~引き寄せ体質をつくる子宮メソッド~』(子宮委員長はる著、河出書房新社刊)
「目に見えないものについて知ることで自分の可能性が広がって、前向きになれるのがスピリチュアル本のいいところ。その意味では“子宮の声を聞いて生きると幸せになれる”というこの本は、読んだ後自分の可能性が広がった気がしました」(サンマーク出版・金子尚美さん)
・『宇宙とつながる、意識の設計図 「生命の樹――受け取りの法則」 月のリズムで行なうワーク 22日間』(小西温子著、Clover出版刊)
「スピリチュアルのメインテーマである“宇宙とつながる”“高次のものとつながる”といったことがどういうことなのかを改めて検討する本。自分が担当した本ですが、校正するうちに意識が拡大する経験をした。」(Clover出版・小田実紀さん)
・『お金の真理』(斎藤一人著、サンマーク出版刊)
「お金の本はもう一生読まなくていいなと思いました。この本だけでいい」(Clover出版・小田実紀さん)
・『借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんが教えてくれた超うまくいく口ぐせ』(小池浩著、サンマーク出版刊)
「“引き寄せとは何か?”“スピリチュアルって何?”など、スピリチュアルについてありがちな疑問を突き詰めてできた本」(サンマーク出版・橋口英恵さん)
・『「龍使い」になれる本』(大杉日香理著、サンマーク出版刊)
「龍という見えない存在と協働することで、世の中をよくしつつ、自分の人生をよくしていこうという視点が新しい。この本の編集をお手伝いして、自分の人生も変わりました。」(ブックライター・編集者・江藤ちふみさん)
・『で、ほんとはどうしたいの?』(岡田哲也著、ワニブックス刊)
「タイトルの通り、自分が本当はどうしたいのかを問い続ける本。これがわかっていれば何をしていてもブレません」(ワニブックス・岸田健児さん)
・『このあと どうしちゃおう』 (ヨシタケシンスケ著、ブロンズ新社刊)
「死をテーマにした絵本で、子ども向けだけどものすごく深い。一見シリアスに捉えられがちな死がユーモラスに描かれているところがすごい。死についてきちんと考える気持ちになります」(ワニブックス・岸田健児さん)
・『「自分神様」を表に出せば、人生は勝手にうまくいく』(大木ゆきの著、KADOKAWA刊)
「スピリチュアル本は最終的に“いかに自分を肯定するか”に行き着く。この本は自分自身を「神様」と捉えて受け入れることで、無理なく自己肯定を促すのがおもしろい点です」(KADOKAWA・Sさん)
・『ネガティブでも叶う すごい「お願い」 本当に現実が変わる「引き寄せ言葉」と意識の使い方』(MACO著、KADOKAWA刊)
「引き寄せはポジティブじゃなくてもいい、という新しい価値観を打ち出しています。ポジティブ・ネガティブという次元じゃない、新しい「引き寄せ」の考え方を示した一冊です。(KADOKAWA・Sさん)
・『呼び覚まされる 霊性の震災学』(金菱清ゼミナール著・編、新曜社)
「この本は東北学院大学の学生が東日本大震災の被災地をフィールドワークして書いた卒論を集めたものなので、どちらかというと人文書なのですが、人間の死や霊性について真摯に向き合っています」(ブックライター・編集者・江藤ちふみさん)
・『あなたのなかのやんちゃな感情とつきあう法』](金城幸政著、サンマーク出版刊)
「感情に対するイメージが180度変わります。怒りや悲しみといったネガティブな感情が湧き起こるときは、その奥に本音が隠れていることを神様が教えてくれているサインと捉えることで、自分の中の本音に辿り着ける本です」(出版プロデューサー・RIKAさん)
「引き寄せの法則」に「宇宙」「神様」「5次元」など、スピリチュアル本を象徴するようなワードが飛び交ったプレゼンタイム。出そろった候補作の顔ぶれを見ても、このジャンルの多様さと奥深さがわかるはずだ。
■編集者が一緒に「仕事をしたい」と思う著者の条件
これらの候補作の中から「2016年もっともおもしろかったスピリチュアル本」を決定するのが「スピフェス」だが、投票の前には登壇した7人のゲストによるトークライブも行われた。
今も昔も本を出したい人は多いもの。スピリチュアル本も例外ではなく、目に見えないものを扱うジャンルだけに、著者の選定は難しい。玉石混淆の「著者候補」から、編集者たちはどのように逸材を選りすぐっているのだろうか。
トークでは様々な意見が噴出。
「残念ながら、スピリチュアル限らず自分のビジネスを広げるためのツールとして本を出したがる人もいます。読者の幸せのために書ける人が著者の条件だと思う」(サンマーク出版・金子尚美さん)
「本を書くことって儲かる商売じゃありません。10万部売れても印税はせいぜい1000万。低い金額とは思わないかもしれませんが、赤裸々に自己開示をした挙句に、時には批判も受け、それで一生暮らしていけるだけのお金にはほど遠い1000万です。それでも伝えたいことがあったり、誰かを自分の本で救いたいと思える熱い想いを持った人がいいのかなと思います」(ワニブックス・岸田健児さん)
と、著者の心意気を挙げる編集者もいれば、
「一言でいえば、かっこいいこと。考え方、生き方やビジュアル面も含めて、何か一つハッとさせるものがある人は読者を惹きつける力があるので、著者を探す時にチェックしています」(KADOKAWA・Sさん)
と、著者の本質を重視する編集者もいた。
■2016年もっともおもしろかったスピリチュアル本が決定!
そして、トークライブの後は、いよいよ「スピフェス」も大詰め。
前半のプレゼンをもとに、来場者が投票。その結果発表の時間である。
果たして「2016年もっともおもしろかったスピリチュアル本」はどの本に決まったのか?
投票で見事1位を獲得したのは『あなたのなかのやんちゃな感情とつきあう法』(金城幸政著、サンマーク出版刊)。
この本を担当したサンマーク出版の橋口さんは
「著者の金城さんにお会いした時に“あなたの中の神様は、あなたが思っているような神様じゃない。お酒を飲んで寝ている神様だ”って言われたんです。当時、私は仕事のできる編集者を目指してすごく肩に力が入っていたこともあって、その言葉がすごく腑に落ちたと言いますか、自分の心の声が聞こえた気がして気持ちが楽になったんです。もっといろいろな人にこんな経験をしていただきたいなと思っています」
と、この本の思い出を語った。
ちなみに2位は『このあと どうしちゃおう』。3人が候補に挙げた『「龍使い」になれる本』が3位に入った。
プレゼンターを務めた出版販促プロデューサーの了戒翔太さんが「善か悪かという欧米由来の二項対立的なものではなく、東洋思想がベースになったものが増えている」と語るように、スピリチュアル本は時とともに形を変え、日本人にとって親しみやすいものに進化している。
未来をよりよくするために、明日を元気に生きるために、「あやしい」と毛嫌いせずに、ディープでちょっと不思議なスピリチュアル本の世界に目を向けてみてはいかがだろう。
『お金の真理』や『「龍使い」になれる本』など、スピリチュアル本にはオーディオブック化されているものも多数。読む時間がない人は耳で聴いてみるのもアリだ
(新刊JP編集部)
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