とある料理店での光景。
決して高級店ではないが、安いお店でもない。ちょっと高めの居酒屋に、常連客が入っていく。
客「うぃっす!」
店主「あっ、○○さん。お久しぶりです! よく来てくれましたね」
客「とりあえず、いつものお願い!」
キンキンに冷えたビールがグラスに注がれて、客はそれをゴクッと飲み干す。
◇
テレビドラマなどで見かける、こうした光景。
しかし、実際にこんなことは滅多に起こらない。「いつもの」だけで好きな銘柄のビールが出てくるお店はどのくらいあるだろうか。
■上客を特別扱いすることは「当たり前」である
「全てのお客様に、同じサービスを」というのが基本的な前提だろう。しかし、「そんなことをしているから儲からない」と指摘する人物がいる。「顧客管理士」の肩書きを持つ高田靖久氏である。
高田氏は著書『お客様は「えこひいき」しなさい!』(KADOKAWA刊)の中で、常連客(既存客)ほど大事にすべきであり、「えこひいき」、つまりは顧客の差別をすべきだと訴える。
この「上客を特別扱いする」ということは、高級ホテルや百貨店などでも行われていること。最高のサービスを前提として、何度も利用したり、よりお金を払ってくれる客にはさらなる極上のホスピタリティを提供する。
それが常連客を逃さない一つの大きな要因となり、安定した売り上げをもたらすのである。
■値引き競争から脱却して、健全に売上を出すために
この「えこひいき」は、飲食店や一般的な店舗であっても取り組みが可能だ。ところが、高田氏は、世間は「えこひいき」よりも価格を下げる「値下げ競争」に傾きがちだと指摘する。
クーポンやポイントカードといった様々な「おトクさ」でアピールし、リピーターよりも新規顧客に対するアプローチを強めているのだ。
しかし、値引きで集まった客は「安い」が判断基準になりがちなため、より安い店があればそちらの方に行ってしまう。これではお店はどんどん疲弊していくばかり。
そこで出てくるのが、「えこひいき」だ。
本書では、常連客の「えこひいき」を仕組み化した「ランクアップシステム」を提唱する。これは航空会社のJALで採用されているランクアップシステムを応用したもので、客は自分のランクを示すカードを渡され、そのランクごとにさまざまなサービスを受けることができる。
例えば、福岡市にある居酒屋では、ランクアップした客には「大王様」と書かれたジョッキにビールが注がれる。さらにそこからワンランクアップすると、サイズが一回り大きい「大・大王様」ジョッキが出てくる。そのジョッキが出てくる度に客は喜ぶのだそうだ。
■客は平等に接してほしいのではなく、特別扱いしてほしい
常連客に対する「えこひいき」を積み重ねていけば、それは究極のホスピタリティにつながる。
高田氏は述べる。客は自分たちを平等に扱ってほしいのではなく、むしろ自分を特別扱いして欲しがっているのだ、と。それが儲けへと結びついていくのである。
会社の売上の75%は、30%の大口顧客(常連客)によって構成されているという。もちろん全ての会社や店舗に当てはまるわけではないが、やはりいつでもお金を出してくれる常連客の存在は、経営をしていく上でとても重要だ。
『お客様は「えこひいき」しなさい!』は様々な企業の「えこひいき」の事例を通して、経営を盛り上げる方法を紹介している。特にサービス業界、店舗を経営しているような人は参考になることが多いだろう。
(新刊JP編集部)
『お客様は「えこひいき」しなさい!』(KADOKAWA刊)