朝ドラのヒロインをきっかけに知名度を上げ、一気に有名女優として活躍する。そんなシンデレラストーリーは、やはり芸能界で生きる醍醐味だろう。では、そんな華やかな世界の裏側はどうか?
『女優堕ち』(河原れん/著、KADOKAWA/刊)は、華やかな女優の生きざまを河原れん氏がリアルに描いた大河小説だ。
旅芸人一座に生まれた井元三津子は、偶然出会った芸能事務所のマネージャー・スガワラを頼りに、家を飛び出し上京。半ば強引に事務所に入り、女優を目指す。子役時代が長いこともあり、演技力はあるものの、個性的な顔立ちとぽっちゃり体型のせいでなかなか仕事にめぐまれなかったが、数々の女優を輩出してきたドラマのオーディションを受けることに…。
三津子の所属芸能事務所の社長である大友曰く、タレントになるというのは、椅子取りゲームみたいなもの。売れっ子の数はいつの時代もほぼ一定で、その椅子に座れるかがわかれ道となる。誰かが落ちると椅子が空き、またほかのだれかが腰をかける。数が少ない上に、いったんポジションを得るとみんな遮二無二しがみつくから、椅子取りゲームは下剋上の様相を見せてくる。この座をめぐる椅子取りゲームは、居座り続けることも試練だが、実はそこに座るまでのほうが格段に難しい。
その椅子に三津子は、このオーディションをきっかけに座ることとなる。今回のドラマで求められるイメージは、貧しさをバネに生きるヒロインだったため、大友の作戦で穴のあいた靴下でオーディションに挑んだ三津子は、見事オーディションに合格、一躍トップスターの仲間入りを果たし、女優として忙しい毎日を過ごすようになる。
有名になってからは、多くのトップ女優と同様、週刊誌に追い回される生活が始まる。
男性関係のスキャンダル、旅芸人の子役時代の詮索などを耐え忍びながら20代を生きる。しかし、いつまでもトップに居座れるものではない。30代、40代と年齢を重ねていくと、女優としての役も変わっていき、絶頂だった人気にも陰りが出る。
そんな時期にラジオやバラエティ番組への出演をきっかけに今まであまり表に出さなかった素をさらけ出したことがウケて、今までとは違った形で人気を盛り返す。バラエティでつかんだ人気を効果的に利用して芝居の世界で再び返り咲くために、小さな舞台の仕事を受けることになる……。
浮き沈みの大きい芸能界で1人の女優がどのように生きていくのか。芸能事務所の社長やマネージャーはどのような作戦で女優として大成させるのか。華やかなだけではない女優の生き様と苦悩。同じような道を辿った実在の女優を思い浮かべながら読んでもおもしろい。
(新刊JP編集部)
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