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ヒットの秘密はコンセプトが9割!

 「消しゴム」「バターチキン」「Tシャツ」「食器」「自転車」「ふとん」「電子レンジ」。
 これらからあなたは何を想像するだろうか?

 日本のブランドメーカー「無印良品」のお店に行けば、生活に必要なものの、ほとんどの買い物がそこで済んでしまうだろう。

 しかし、よく考えると、これは奇妙なことではないだろうか。これだけ「すべてがある」というブランドは無印良品以外ほとんど存在しないし、こうした形でブランドが存続することは稀だ。では、どうして無印良品は成功を収めているのだろうか?

 ブランド・コンサルタントである江上隆夫氏は『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?』(SBクリエイティブ/刊)の中で、無印良品を皮切りにして、世の中で成功しているブランドのイメージ戦略、コンセプトの作り方について解説を加えている。

■多少値段が高くても、購入してしまう理由とは?
 無印良品のすごいところは、値段が他のブランドよりも多少高めに設定していても、売れているというところだ。その最大の勝因について、江上氏は「コンセプト」を指摘している。
 実は江上氏によれば、この「コンセプト」は日本企業が苦手としているもので、ブレないコンセプトを持つことこそがグローバル市場の中で勝ち抜いていける条件の一つであるのだ。

 では、無印良品のコンセプトのすごさとは一体どこにあるのか?
 無印良品は1980年に西友のプライベートブランドとしてスタートし、「良品質イメージを損なわせない構造的な廉価商品の提供」をコンセプトとして掲げた。取扱商品は、日用生活雑貨9品目、食品31品目と、今と比較すると少なく、「生活者が本当に必要とするものを、ムダのない必要十分な機能とカタチでつくり、提供する」というコンセプトを実践するものになっており、今では、生活のあらゆるものを提供する唯一無二のブランドに成長した。
 無印良品がすごいのは、ブランド商品の幅を広くしていっても、そのブランド価値を落とさなかったことだ。普通、商品の幅が広がるほど、イメージが薄まり、ブランド力は落ちていくもの。江上氏はこれについて「無印良品は『たったひとつの商品』を売っている」と指摘する。無印良品の標榜する「これがいい」ではなく「これでいい」という言葉を通して、消費社会に対する高度な批評、そして日本独特の「わび、さび」や「用の美」につながる美意識を抽出しているのではないかと推測しているのだ。

■日本の企業に求められるものは「型」から「コンセプト」へ
 では、そもそも「コンセプト」とはどのようなものなのか。
 「コンセプト」を訳すと「概念」という意味になるが、これでも分かりにくい。江上氏による定義は「目的を達成するための原理・原則を短く明確に表現した言葉」になるのだが、実はこの「コンセプト」とは全く別の行動指針となるものが日本にはあった。それが「型」だ。
 「守・破・離」という言葉を聞いたことがあるだろう。師の教えを守り基本を身につけ(守)、基本を守りながら自分なりに技を発展させ(破)、基本から離れて自分の世界に入り込んでいく(離)。この3つの型で技術を磨くことが、日本の成長の原動力の一つとなった。
 しかし、「型」は一度はまるとなかなか抜け出せなくなり、変化の激しい時代においては「型」が「時代遅れ」になってしまうという欠点があった。それが日本の企業の動きの遅さの一つの要因だったといえる。
 そこで江上氏は、より大胆に「型」を使いこなしながら、「コンセプト」の概念を取り入れることで、日本の企業はまだまだ大きな変革を起こせると確信しているのだ。

■成功の裏には「コンセプト」あり
 具体的に「コンセプト」をどのようにビジネスに織り交ぜていくのか? 本書では無印良品以外のほかにもそうした良いコンセプトの具体的な事例についてしっかりと触れられている。
 例えば、例えばスターバックスの「3rd Place」は、自宅と会社以外のくつろげる場所というコンセプトで受け入れられた。世の中において「どのような存在なのか」、「どのように存在すべきか」を明確に発信している好例だ。

 ほかにもAKB48やタニタ、ポルシェ、さらには日本の経済成長を支えた政策など、成功した実例から「コンセプト」の作り方が本書では説明されている。
 「コンセプト」は一見すると「キャッチコピー」にも似ているところがあるが、「キャッチコピー」は「コンセプト」を一言で表現したものであり、「コンセプト」づくりで考えなければいけないことはかなり広い。

 今、自分が関わっているサービスが一言に凝縮して伝えることができない人も多いのではないだろうか。また、これからオープンしようとしているサービスをどうしていこうか考えている人もいるはずだ。そうした人たちにとって、本書は大いに参考になるだろう。
(新刊JP編集部)

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