今年、口コミで話題になり、観た多くの人が大絶賛したインド映画といえば『きっと、うまくいく』(原題“3idiots”)だ。
工学を愛する自由奔放なランチョー、父親にエンジニアへの道を強制されながら動物写真家に憧れを持つファルハーン、貧乏な家に育ちいつもゲン担ぎばかりしているラージューの“3バカトリオ”が織り成す、笑いあり涙あり踊りありの青春映画で、自らの意志で人生を切り開いていこうとする姿に、国境超えて賛辞が飛んだ。
この映画の中で、主人公のランチョーがその場にあるものを使って何かを作りだすことがある。創意工夫を持って、困難に立ち向かおうとするのだ。
それを、インドでは「ジュガール」と呼ぶそうだ。
日本でコンサルタントして活躍するインド人のサチン・チョードリー氏は、著書『インド人大富豪 成功の錬金術』(サンマーク出版/刊)の中で、インド人大富豪たちの共通点は、その「ジュガール」にあるという。
■何もないところから知恵を使って生み出す「ジュガール」
「ジュガール」とはヒンディー語で「応急処置」のことを指す。
今でこそ経済が急成長しているインドだが、もともとは何も「ない」国。資源もなければ、お金もなく、インフラも整っていなかった。また現在でも地域の格差は激しく、国民の大半は貧しい暮らしをしている。
だからこそ、「いまあるもので、何かを生み出す」という知恵が生まれるのだ。
インド人の富豪たちはこの「ジュガール」をビジネスで活用している。
それは「お金をかけずに頭を使う」ということだ。
例えば、チョードリー氏はかつて、日本で電話の飛び回り営業で成功を収め(これもジュガールによる逆転の発生でうまくいったものだ)、もっと大きなサクセスを求めて旅行会社を立ち上げた。
しかし、資金はまったくなし。それでも、自分の企画力に自信を持ち、魅力溢れる富裕層向けの旅行プランを考えたところ、融資を約束してくれる投資家が多数集まった。さらにすごいのは、全く行ったこともない国でも「できます!」と依頼を受けて旅行を成功してさせてしまったこと。
もともとチョードリー氏は、母国インドで国際会議の日本語通訳やビジネスマンの出張コーディネーターなどで活躍していた経歴もあり、富裕層が喜ぶポイントをしっかり知っていたのだ。
富豪たちの中には、魅力的なビジネスプランや面白そうなアイデアにどんどん投資したいと思う人もいる。チョードリー氏は何もないところから、知恵だけでビジネスを成長させたのだ。
■重要なことにはちゃんと時間をとる
インド人の時間感覚がかなりアバウトだということは、多くの日本人が知っていることであり、カルチャーショックを受ける部分でもある。
でも、さすがに一流の経営者はスケジュール通りに動くだろう…と思いきや、意外とそうでもないだそうだ。もちろん、時間は詰まっているが、彼らが優先するのは「ビジネスとして重要だ」と思ったもの。つまり、予定に厳密に従うことはないという。
予定や計画よりも、大切なことがある。これも「ジュガール」の一つと言えるはずだ。
チョードリー氏は1973年にニューデリーで生まれ、幼少の頃、日本に滞在したことがあり、その縁で96年に再来日。日本で会社員生活をおくるも挫折しかけたところで、この「ジュガール」を使って、一気に成功者に上り詰めた経歴を持つ。
そんなチョードリー氏は、戦後間もなくの日本の復興を持ちだして、日本人も“ジュガール・スピリット”を持っていると断言する。
何もなくても、なんとかなる。そこから便利にしていけばいい。『インド人大富豪 成功の錬金術』はインドの急成長の理由が分かる、ビジネス指南書だ。
(新刊JP編集部)
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