あなたの周りに「人が触ったものを触るのが嫌」「何度も手を洗わないと気が済まない」など、潔癖症の人はいませんか?
芸能界では「シャンプーの底がヌルヌルしてるのが許せない」というロンブー田村淳さんや、漫画家の倉田真由美さんに“潔癖症だめんず”の烙印を押された千原ジュニアさんなどが有名です。
潔癖症は、その人の性格や指向性によるものですが、これが度を過ぎて日常生活が立ち行かなくなると、「強迫性障害」という精神疾患と診断されます。ちなみに、先にあげたような例の場合は、強迫性障害の中でも「不潔恐怖・洗浄強迫」に分類されます。
『やめたいのに、やめられない』(岡嶋美代、原井宏明/著、マキノ出版/刊)によると、強迫性障害には、「不潔恐怖・洗浄強迫」のほかにも「加害恐怖・確認強迫」「縁起恐怖」「収集癖」「不完全強迫」「強迫性緩慢」などさまざまなものがあり、100人に2~3人は見られるそうです。
たとえば、こんな症状の自覚がある人は、強迫性障害、あるいはその予備軍かもしれません。
□物が左右対称に並んでないと耐えられない
□4や13という数字を見ると必ず悪いことが起こるような気がしてしようがない
□何かをしようとすると次々と雑念が浮かんできて動きが止まってしまう
□手がかぶれるまで洗い続ける
□カギをかけたか何度も確認せずにいられない
□集めた物を捨てられない
□行動が完璧に出来ないと最初からやり直す
■潔癖症が原因で人生が台無しに
では、強迫性障害によって日常生活が立ち行かなくなるというのは、一体どういうことなのでしょうか。
30歳無職の坂本良助さん(仮名)は、小学生時代の体験が原因で、「不潔恐怖・洗浄強迫」になってしまいました。
5年生の時、同級生の男の子がおもしろ半分に坂本さんの定規を取り上げ、自分のペニスの長さを測ったのです。それ以来、坂本さんは小学校のことを考えたり、小学校の近くを歩いたり、同級生に会うと自分が汚れた気分になり、その汚れを周囲に広げてしまう気がして、手を繰り返し洗うようになりました。
その後、症状はエスカレート。小学校に関わるものがたくさんある自分の勉強部屋に入ることができなくなり、母親が小学校の近くを通るのも許せなくなりました。母親が小学校の方向に行ったとわかったら、玄関で服を脱ぐように命令し、従わないと家に入れなかったそうです。
そのうち、出かけた方向に関わらず、母親が帰宅すると玄関で服を脱がせるようになった坂本さん。耐えかねた母親が「いい加減にしなさい!」と服を脱がずに家に入ると、彼女が通った後の玄関や廊下を消毒用アルコールで狂ったようにふき続けます。
もちろん、こんな状態では本人が小学校に行けるはずもなく、家に引きこもるようになった坂本さんは小学校5年以上の義務教育を受けられませんでした。30歳になった今でも仕事に就けず、日常生活に必要な読み書きや計算も苦手で、これからどう生きていこうか考えあぐねているといいます。
今回は「不潔恐怖・洗浄強迫」の例を取り上げましたが、本書には、強迫性障害のさまざまな事例と治療法が、二人の専門家の視点で明らかにされています。
上記のチェック項目に心当たりがある人、または知人が当てはまるという人は、症状の度合いや対処法を知るためにも、一度手にとってみることをおすすめします。
(新刊JP編集部)
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